成長し続ける「コワーキングスペース市場」
コロナ以前にも、起業家やフリーランスで働く人がスターバックスなどのカフェで仕事をするというスタイルが注目を集めていました。拠点を持たず、自由に働くスタイルのビジネスパーソンは「ノマドワーカー」とも呼ばれ、全国各地に点在するコワーキングスペースはノマドワーカーにとっての仕事場の代表格でもありました。
新型コロナによりコワーキングスペース需要が高まる
しかし、新型コロナウィルスの影響で外出自粛要請が出ると、オフィスに通勤するのではなく自宅や自宅の最寄りのスペースで仕事をするテレワークやリモートワークといった働き方が一気に増加。個人だけではなく、企業単位でも「長時間の通勤が不要な第三の仕事場」を用意することが求められ、コワーキングスペースの需要が急加速しました。さらに、起業ブームや、「働き方改革」など政府の後押しで「副業」が多くの会社で解禁されるなど、働き方の多様化が進んでいることから、利用者の層が広がっているのです。
【「働き方改革」とは】
”「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。”
このように、国としてテレワークをさらに推進するための取り組みが進められています。
一般社団法人大都市政策研究機構によると、全国のコワーキングスペースの数は2021年12月の2042施設となり、2年半でおよそ2.5倍に増加したと報告されています。今後も首都圏を中心にさらに拡大すると予想されていて、より身近で利用しやすい存在になることはほぼ間違いないでしょう。
※出典:一般社団法人大都市政策研究機構 調査研究レポート(2021年12月版)
その勢いは当分続くとされ、株式会社日本能率協会総合研究所が2021年に発表した調査結果によると、2026年度のコワーキングスペースを含むフレキシブルオフィス市場は、コロナ以前の2020年度と比べるとおよそ3倍の2,300億円となる見込みとされています。
コワーキングスペースを利用するメリット
テレワークになっても、インターネットやパソコンさえあれば自宅でも仕事ができます。しかし、コワーキングスペースの需要が拡大した背景には、利用者側に次のようなメリットがあるからです。
■コワーキングスペースを利用するメリット
・インターネットやプリンターなど、仕事に必要なものが完備されている
・ほかの人が働いているとモチベーションが上がる
・新たな空間に身を置くことでクリエイティブな発想ができる
・移動中や外回りなどの隙間時間を有効活用できる
・好きな場所、清潔で綺麗な空間で仕事ができる
・異業種の人と繋がることもある
上記のように、単に「仕事の環境が整っている」だけではなく、自宅では仕事と私生活の区別がつきにくい方や、非日常感、人の気配やつながりを求めて利用する方も多いようです。さらに、カフェや、コワーキングスペースであっても交流エリアだと騒音があったり、自宅だと家族や子どもがいて、オンライン会議に集中しづらいという課題に対するソリューションとして、個室テレワークブースの需要も伸びています。
コワーキングスペースの「事業としての魅力」
次に、遊休スペースをコワーキングスペースとして貸し出すことで収益化をするワークスペースビジネスの魅力を考察していきましょう。
■コワーキングスペースの事業としての魅力
・空きスペース(遊休スペース)で収益化ができる
・飲食店や宿泊施設と比べると少ない設備投資ですぐに事業を始められる
・市場のニーズが高まっており、立地によっては比較的集客しやすい
・開設や撤退が簡単で、次の用途までの期間限定でスペースの有効活用ができる
このように、空きスペースを柔軟に有効活用できることが大きなメリットといえるでしょう。たとえば、社員のテレワークが増えたことでオフィスの縮小を考えている企業や、オフィス自体を閉鎖する組織などが「とりあえず」スペースを活用することができるのです。最近では、三井不動産や長谷工コーポレーション、コクヨなどの大企業もワークスペース運営に進出しており、さらに市場が拡大化しています。
コワーキングスペースによる新たな価値
コワーキングスペースには起業家やテレワーカーの単なる受け入れ先だけではなく、新たなビジネスマッチングやコミュニティづくりの場として期待されている側面もあります。現状は感染症対策もあり、気軽な会話などは難しくなっていますが、本来は異業種や異業界の人たちがオープンなスペースを共有することで、刺激されたり交流が生まれ、そこから新しいビジネスの創出につながることも多いのです。
また、会社でもなく自宅でもない第3のワークスペースという位置付けで、地域密着型の情報交換や人脈形成の場としても利用され、今後も新たな価値が創造されるかもしれません。