「無人店舗」のメリット
無人店舗に特別な定義はありませんが、ここでは「無人で物品やサービスを提供する建物やテナント」とします。「無人コンビニ」などはニュースでお聞きになった方もいるかと思います。最近では、物販に限らず「無人貸会議室」「無人ジム」といったいわゆる場所貸しを無人で行う事例も増えています。
なぜ無人店舗ビジネスはここまで拡大しているのでしょうか。1番わかりやすいメリットは「人件費の削減」です。働き手不足が騒がれている昨今では、単純に「時給×労働時間」だけでなく、採用に係る費用や人材の定着のための福利厚生も含めると莫大な費用となります。
また、無人であることはコストの削減だけでなく、新しいニーズの掘り起こしや事業展開も可能となります。実際に無人で運営している店舗では、スタッフからの無理な販売がなく、お客様のペースで過ごせることから、新しい店舗体験として高評価を得ている事例もあります。また、従業員が不在になることで、休憩スペースなどを極限まで削減できます。いままで店舗を出せなかったような小規模な遊休不動産の活用としても着目されています。
「無人店舗ビジネス」を始める際の3つのポイント
そんな無人店舗ですが、もちろんメリットだけではありません。人件費はかからないもののセキュリティシステム等の導入で初期の設備投資では有人店舗よりも費用がかかる場合もあります。初期の設備投資の段階で実運用を具体的にイメージした計画が必要となります。無人店舗の計画で特に重要となるポイントを3つに絞ってご説明します。
1.適切な利用者情報の取得
ひとつ目のポイントは、適切に利用者情報を取得することです。無人店舗と有人店舗の大きな違いは、「リアルな接触機会がゼロ」という点です。商品を手に持った方へスタッフが「お客様にはこれがお勧めです」とリコメンドすることも、商品を手にお支払いを忘れて出ていかれてしまう方に「お支払いをお願いします」と注意喚起することもできません。
そのために、「誰が利用しているのか」を把握することが重要となります。無人店舗においては、ほとんどの場合、利用者情報の登録は必須となるでしょう。利用者情報の登録には多少なりとも時間がかかるため、お客様に利用者情報を登録することのメリットをしっかりと認識してもらう必要があります。「利用者情報を登録することのメリット」としては以下のようなものがあります。
・利用者のニーズに合った情報配信がある
・利用する場所やサービス自体に希少価値がある(珍しい物品がある、特別な器具がある……)
・利用度合いに応じた特別なサービスがある(クーポンの発行、コミュニティへの参加……)
ここで重要なのはセキュリティの担保のために登録を促すわけではない点です。セキュリティを担保しようと考えると「氏名・連絡先・住所・証憑(しょうひょう)……」などを要求することになり、お客様の登録の手間も増えるだけでなく、情報の利用用途が不明瞭で不安感を与えてしまいます。
一方で、リアルな接触機会に代わるコミュニケーションの手段と考えると内容は変わります。たとえば「氏名・連絡先」のほかに、「嗜好を把握するためのアンケート」などが考えられます。これらのアンケート内容から、実際にリコメンドなどを的確にすることで「いいお客様」になってくれる確率も上がります。またこうしたアンケートは結果的に提供サービスとマッチングしないお客様をふるいにかける機能も果たしてくれます。
「いいお客様」は利用方法を守ってくれるだけでなく、そのサービスを知人へ積極的に紹介してくれるなど広告の役割も果たしてくれます。無人店舗では、人がいないがゆえに店舗へ来るまでの過程から売れる仕掛けづくりを考えることが非常に重要になります。