ホテルのセルフチェックインシステム
ホテルでのセルフチェックインとは、宿泊者が事前にインターネットなどを通じてチェックイン手続きを済ませることができる仕組みのことを指します。まずは宿泊業界におけるセルフチェックインの傾向や、ホテルの公式スマホアプリの登場による変化について紹介します。
セルフチェックインの普及
近年では、感染症対策の観点から非対面での接客が求められていること、DXによるフロント業務の効率化や人件費の削減、利用者の利便性の向上などの理由から、セルフチェックインシステムを導入する施設が増加しています。
また、オンライン予約システムやスマートロックなど各種システムと連携して機能を拡張することが可能で、施設運営全般に関わる業務改善につなげることができたり、利用者により一層快適な宿泊機会を提供することができたり、といったこともセルフチェックインシステムの普及の一因となっているようです。ただ、ひと口にセルフチェックインシステムといっても、サービスの提供会社やホテル事業者によってさまざまな方式が存在しています。
たとえば、施設に備え付けのタブレット端末などを利用する手法、ビデオチャットやSkypeなどを利用して遠隔地からの人的対応を組み合わせた手法、利用者のスマホなどに事前に届いたQRコードを施設側のリーダーに読み取らせる手法、逆に利用者が到着時に施設側の用意したQRコードをスマホで読み取る手法など、多種多様です。
「アプリ」でセルフチェックインできるホテルの増加
そんなセルフチェックインシステムのひとつの進化系として今回ご紹介したいのが、ホテルアプリの活用です。
ホテル業界では自社単体でのアプリの導入は、これまであまり進んでいるとはいえませんでした。その背景としては、自社独自のアプリを開発・運用していくには大きなコストと労力が必要であると考えられてきたこと、集客に関しては楽天トラベル、じゃらん、るるぶトラベル、エクスペディア、ホテルズドットコムなどOTAと呼ばれる予約サイト(アプリ)への依存度が高かったことなどが考えられます。
しかし最近になって、独自のアプリを導入するホテルが目立つようになってきました。その外的要因としては、スマホの普及率が急速に高まったことが挙げられます。総務省が5月に発表した令和3年「通信利用動向調査」によればスマホの世帯保有率は88.6%と9割に近づいています。スマホの取り扱いに習熟するにつれ、ユーザーのあいだではアプリをダウンロードすることへの抵抗感は薄れ、身近なツールとしてアプリを上手に活用するようになってきました。
一方、ホテル側では、競争が激化するなか、集客力をより強化したいとの観点から、スマホアプリならではのさまざまな機能に注目しています。アプリ導入によるメリットとしては大まかに次のような事項が挙げられます。
・セルフチェックイン機能や施設情報・観光情報など利用者に役立つ要素を自在に搭載できる
・アプリの登録情報を活用した属性分析に基づく精緻なマーケティング戦略を構築できる
・アプリ限定の商品販売やキャンペーンを通じて販売促進や売上の拡大につなげることができる
・ポイントカード機能などを付加することでリピーターの獲得につなげることができる
・OTAを介さない自社直接の予約を拡大することで利益率の向上につなげることができる
ホテル・旅館業界におけるアプリ活用の現状
現在、実際に自社アプリを導入しているホテルを見てみると、アパホテル、スーパーホテル、JRホテルメンバーズ、相鉄ホテルズ、東横INNなど大手・中堅のシティホテルチェーン、富士屋ホテル&リゾーツ、都ホテルズ&リゾーツ、東京ディズニーリゾーなどのリゾートホテルグループを中心に拡がっています。
ただ、App StoreやGoogle Playなどで検索してみると、大手のホテルチェーンに留まらず、必ずしも規模の大きくないホテル単体でもアプリの導入が進んでいることが確認できます。前項で、自社独自のアプリを開発・運用していくには大きなコストと労力が必要であると考えられてきた、と解説しました。
しかし最近では、ホテル業界でアプリに対する需要が高まってきたことを反映して、多くのアプリ開発会社がリーズナブルな費用でホテル向けアプリを提供するようになっています。アプリ開発会社によれば、一定程度定型化されたパッケージをホテルや利用者の特性に合わせてカスタマイズすることで、オリジナルなホテルアプリを比較的低コストに制作することが可能になったそうです。開発期間も従来と比較して大幅に短縮されました。
ホテル業界のDXが進んでいるといえそうです。