ネット株下落の主因は「投資家心理の悪化」か
企業のファンダメンタルズもさることながら、投資家心理の悪化がネット株大幅下落の主因とみられている。米利上げ継続、米中関係の悪化や中国のゼロコロナ政策による経済活動の停滞などを背景に、投資家の「ハイテク株離れ」が鮮明。また、大株主の株式売却も重荷となっている。
ソフトバンクグループは8月、先渡し売買契約にアリババ株を差し出し、出資比率を6月末時点の23.7%から14.6%に減らす計画。テンセントの筆頭株主Prosusは、保有するテンセント株の一部を少しずつ売却し、自社株の取得に当てる計画。美団や快手科技なども大株主であるテンセントの保有株式売却が懸念されている。
半面、企業の自社株買いとサウスバウンド(中国本土⇒香港)経由の中国マネーの流入がその売り圧力を吸収している。
アリババは250億米ドルの自社株取得枠を設けている(6月末時点、すでに130億米ドル実施済み)。テンセントは年初来約245億HKD規模の自社株を取得した。中国マネーによるネット株の押し目買いも目につく。
10月20日時点、サウスバウンド経由でテンセント株の保有比率は7.99%まで上昇(年初来、1億6410万株の買い越し)した。
中長期的な「中国マネー」の流入拡大に期待
ハイテク株を取り巻く厳しい外部環境が続くなか、当面は市場心理の改善を待つ局面にあると考える。中長期的に中国マネーの流入が拡大すれば、見直し買いの誘発も期待できる。
香港当局は、人民元建て香港株とアリババや百度集団などセカンダリー上場銘柄のサウスバウンド対象銘柄への追加を積極的に進めている。近い将来に実現すれば、中国マネーの流入拡大につながろう。
昨今の株価下落により、ネット株のバリュエーション水準は大きく低下し、投資魅力は一段と増している。東洋証券の今期予想EPS(Non-GAAPベースの調整済み純利益)に対し、アリババの予想PERはすでに10倍程度まで低下している(10月20日終値)。
龔 静傑
東洋証券香港現法亜洲有限公司
中国株アナリスト/香港ストラテジスト
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