4~6月期は売上高が鈍化…コスト削減が進むネット各社
22年4~6月期、上海市の都市封鎖などの影響を受け、ネット大手各社は売上高の鈍化に見舞われたが、全体の業績はおおむね市場予想を上回った。
各社は規模拡大志向から収益性重視へ舵を切り、コスト削減に取り組んだ。特に販売・マーケティング費の削減が目立った。また、人員削減にも積極的に動いているため、今後、一般管理費と開発費の減少も顕在化する見込み。
6月末時点、アリババとテンセントの従業員数は各々24万5700人、11万715人と、3月末から各々9241人、5498人ほど減少した。
調整済み純利益を見ると、テンセントとアリババは2桁の減益だったが、京東集団は前年同期比40.2%増、美団も前年同期の22.17億元の赤字から20.57億元の黒字に転換など両社の収益性は大きく改善している。
下期は業績回復へ…ただし中長期的な成長には不透明感
コスト削減の顕在化、前年同期の業績鈍化の反動や景気回復などを背景に、下期業績は回復を見込む。
ただ、業績の回復ペースは緩やかなものにとどまる可能性が高いと懸念されている。
中国当局のプラットフォーム経済に対するスタンスは「問題点を正す」段階から「健全な発展を促進する」段階に移行しているが、ネット各社は規制下における事業運営を迫られるため、規制は依然として事業拡大の足かせとなっている。
また、中国のネット利用者は10.5億人を超えており、各社は新規利用者の獲得より既存顧客の価値最大化を重視するようになっている。各社は、新たな成長エンジンとして海外展開やクラウドなど企業・政府機関のDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進に注力。テンセントは、海外ゲーム会社への出資・買収を加速している。
クラウド市場ではネット大手がリードしているが、通信大手の快進撃には注意が必要だ。22年1~6月期、チャイナモバイル(00941)など通信大手3社のクラウド事業は、いずれも2倍以上の急成長を遂げ、チャイナテレコム(00728)とチャイナモバイルの同事業の売上高はいずれも200億元を超えた。
同期間、テンセントのフィンテック・法人サービス事業(クラウドを含む)は前年同期比5.0%増収、アリババのクラウド事業は、同11.4%増収の366.56億元にとどまった。ネット大手2社のクラウド事業は採算性重視への方針転換で伸びが大きく鈍化したと推測される。
調査会社のiResearchによると、25年の中国クラウドサービスの市場規模は1兆2683億元(約26兆円)に達し、21年の4倍近くまで急拡大する見通し。
クラウドは依然として成長ポテンシャルの高い事業とみられ、今後の事業拡大と収益性改善に期待したい。