後を絶たない、パワハラが引き起こす凄惨な事件
今回、東証一部上場企業において営業係長としてドライバー管理・営業等の業務を行っていた被災者が、上司からの度重なるパワーハラスメントを受けたこと等により、勤務先の建物から駐車場に飛び降りて自死(自殺)するという痛ましい事件が発生した。
残念なことに、我が国ではこのような悲惨な事件が後を絶たない。
ハラスメントは絶対にあってはならない事態であり、あらゆる面において、その防止は職場における最優先事項である。
このような問題提起をすると、必ずと言っていいほど出てくるのが次のような意見だ。
「甘ったれるな!」「部下を甘やかすだけでは人は育たない!」
「俺が若いころにはカミナリ上司に怒鳴られたり殴られたりするのが当たり前だった。そのときはつらかったけど、そうやって俺は成長してきた!」
「体罰」が疑問視されるようになった2つの観点
しかし、考えても見てほしい。
今の時代にオリンピックの強化合宿で、監督が選手にうさぎ跳びを強要したとしたらどう思うだろうか。
高齢の監督が選手に、
「俺たちの時代にはうさぎ跳びで寺の階段を何十往復もしていたんだ。この程度のことで根を上げるな!」と怒鳴りつけていたら、どう感じるだろうか。
そんな監督は即刻クビである。
選手がかわいそうだからというだけではない。そんな非科学的なトレーニング法で、世界に挑めるはずがないからである。
スポーツの世界だけではない。
現代の学校教育や家庭教育では、体罰は絶対に許されないという意見が支配的になった。
スポーツの世界でも教育の世界でも、このような変化には二つの側面からの理由がある。
ひとつは、選手や子どもの人格・人権を尊重すべきであるという観点。
もうひとつは、より効果的な指導方法が、様々な知見や実験により科学的に解明されてきたという観点である。
本稿では、主にパワーハラスメントを念頭に、職場におけるハラスメントの問題点を考察する。