本連載は、早稲田リーガルコモンズ法律事務所が提供する、所属弁護士によるコラムを一部抜粋・再編集したものです。
ドラッカーに影響を与えた日本の「いい会社」の原則
翻って、日本社会に蔓延するパワハラ的な業務指導とはいったい何なのか?
「怒鳴る」「威嚇する」「不利益を告知して脅す」といった、部下の恐怖心を利用した管理手法は、ムチを手にした恫喝であり、マネジメントの放棄である。
恐怖心は人を委縮させ、思考能力を低下させ、モチベーションを奪い去る。そんな非科学的な指導方法で、世界に挑めるはずがない。
もっとも、ドラッカーが「マネジメント」を創作する際に大きな影響を与えたのは、ほかならぬ高度経済成長期の日本企業である。
古野庸一氏と小野泉氏は、30年以上好業績であり、100年以上続く長寿企業を「いい会社」として、その特徴を次のように述べている。
「いい会社」は、自らの存在意義を自覚し、その意義に沿って経営を行い、信頼のベースを形成している。そして、社員と向き合い続けている。社員を信頼し、社員の志向・価値観を尊重し、自律性を促し、社員の持っている力を引き出すことによって、業績を高めている。社員一人ひとりに仕事の意義を語っている。(古野庸一・小野泉著『「いい会社」とは何か』(講談社・2010年))
多くの人は、人生の大部分を仕事時間に使う。一般的な会社員であれば、少なくとも1日8時間、週5日を仕事に捧げている。
会社から信頼され、自分の志向や価値観が尊重され、自律性を促され、自分の持っている力を最大限引き出して働く。そういう職場が、当たり前の世の中にしていかなければならない。
原島 有史
早稲田リーガルコモンズ法律事務所 弁護士
早稲田リーガルコモンズ法律事務所
弁護士
過労死・過労自死・過労やハラスメントに伴う損害賠償請求事件等の労働者側事件のほか、社内の各種規程類の整備、問題社員への対応、ハラスメント等の事実調査など幅広い労働問題に対応できる弁護士である。
特に過労死問題の実績は顕著であり、数多くの過労死・過労自死案件(以下「過労死事件」という)において遺族側代理人として解決に導いている。ワタミ事件の労働者側代理人弁護士も務めた。
過労死事件等の重大事件を通じて学んできた、「どうすればこのような事故は起きなかったのか」「ハラスメント対策を実施する際にどこがネックになるのか」「職場環境を改善するためにはどうすればよいか」といった観点からのアドバイスを企業側に提案している。
また、個別労働紛争では労働の実態を把握するための証拠の収集が困難であることも多いが、粘り強い姿勢と豊富な法的知識を駆使し、徹底した証拠収集作業を行う。過労死事件におけるご遺族の要望に真摯に対応し、金銭面のみにとらわれることなく、事案解明や企業側の謝罪、労働環境改善等、様々な解決方法を追求する弁護方針を取る。そのような柔軟かつ問題の本質を見失わない弁護姿勢は、事件に直面した従業員やその遺族からの厚い信頼に結びついている。
一方、地域の福祉事務所やNPO法人等と連携し、介護事故問題、生活困窮者支援といった福祉問題や、LGBTIQに関連する法務にも積極的に携わっている。同性婚を認める社会を目指すNPO法人であるEMA日本において理事を務める。
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