令和3年の精神障害に関する労災申請件数は2,051件
ご存じのように、会社員が業務に起因して病気やけがをしたときには、労災保険が一定の損失をカバーしてくれる。
「労災保険とは」(出所:厚生労働省・東京労働局)
労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。
また、労災保険においては保険給付のほかに、労働福祉事業を行っています。
ここでいう「病気」には、「アスベスト(石綿)を吸って肺がんになった」といった身体的な疾病だけでなく、「仕事によるストレスでうつ病になった」といった精神疾患も含まれる。
厚生労働省は、精神障害の労災認定基準を公表している(厚生労働省Webサイト)。
厚生労働省が毎年公表している「過労死等の労災補償状況」を見てみると、昨年度(2021年度)の精神障害に関する労災申請件数は2,051件で、うち608件が「業務に起因するもの」として支給決定を受けている。
特に、精神障害による自殺事案の労災申請件数は155件で、うち81件が労災の認定を受けた。
精神障害の主な原因について労基署の決定件数をみてみると、申請があったもので最も多いのは「上司とのトラブルがあった」の388件で、労災と認定された理由で最も多かったのは「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の99件である。
労基署が労災と認定しているのは、あくまで氷山の一角にすぎない。
上司からのパワハラにより体調を崩しても、うつ病で体が動かず、そのまま泣き寝入りするパターンの方が圧倒的に多く、仮に体調が回復した段階で労災を申請したとしても、証拠が足りないため不支給決定となることも少なくない。
このような理不尽な攻撃により、毎年たくさんの会社員が身体と尊厳を壊されているのである。放置してよいはずがない。
パワハラ加害者はがん細胞である。放置していたら周りの細胞もがん化していく。早期発見、早期治療が何よりも重要である。
ドラッカー「アメとムチは有効ではない」
2009年12月に発行され、翌2010年にベストセラーとなった岩崎夏海氏の著書「もし高校野球部の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)。
同著作のもとになったP.Fドラッカーの古典的名著「マネジメント」には、こんな一節がある。
「アメとムチによるマネジメント、すなわちX理論によるマネジメントはもはや有効ではない。先進社会では、肉体労働者にさえ通用しない。知識労働者に対しては、いかなる国でも通用しない。マネジメントの手に、もはやムチはない。アメさえ人を動かす要因とはなりえなくなった。
それでは、報酬というアメと恐怖というムチに代わるべきもの、新しい現実に合ったアメとムチは手にできるか。」(P.Fドラッカー『マネジメント【エッセンシャル版】-基本と原則』(ダイヤモンド社・2001年)より抜粋)
ドラッカーはアメとムチによる支配を否定したばかりか、当時有力だった心理学を応用したマネジメント手法をも批判し、成功を収めている数々の実例を詳細に分析したうえで、次のような原則を提示している。1970年代のことである。