(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 14,863.06 pt(▲3.66%)
中国本土株指数 5,028.98 pt(▲4.08%)
レッドチップ指数 2,958.39 pt(▲3.38%)
売買代金1,246億2百万HK$(前日1,229億4万HK$)

欧州中央銀行はユーロ圏の金利を引き上げ

欧州中央銀行(ECB)が27日に開いた政策理事会では、ユーロ圏の市場金利を予想通り75bpsの引き上げを実施した。

 

欧米では景気後退(リセッション)に陥るとの懸念が高まる中での大幅な利上げには反対の声も上がっていたが、インフレ抑制を優先し3会合連続の金融引き締めに踏み切った。

 

今回の結果は事前の市場予想通りだったこともあり、マーケットの反応は限定的だった。それ以上にFRBが物価の目安として注目する個人消費支出(PCE)価格指数が年率4.2%と前回の7.3%から大きく低下したことで、利上げペースの減速期待が続いた。

 

米国市場の目先は利上げペースから企業決算にシフトし始めている。前日、低調な決算を受けてメタ・プラットフォームが前日比24.6%の大幅安となっていたが、引け後、決算を発表したアマゾンは四半期の売上高見通しが市場予想を下回り時間外で17%近く下落した。

 

アップルについても売上高が市場予想を下回り、今週発表されたマイクロソフト、アルファベットに続いて大手IT企業の失望決算が相次いでいる。ナスダック先物は大きく下落に転じるなど、米国企業からも軟調な業績が改めて浮き彫りになってきた。

香港市場は約13年半ぶりの安値を再び更新

28日、香港市場は再び急反落した。ハンセン指数は前日比3.66%安と節目である15,000ポイントを割り、週間の下落率としては8.32%と過去最大となった。終値ベースでは共産党大会閉幕後に大幅反落した25日の水準を下回り、約13年半ぶりの安値を再び更新した。

 

香港に上場する主要銘柄は全面安となり、アリババをはじめIT大手株から不動産株、金融株は総じて売られる形となった。

 

同様に、ハイテク株で構成されるハンセンテック指数も前日比5.56%安と大幅安、不動産株で構成されるハンセン本土不動産指数は前日比5.70%安だった。

 

マーケットにとって中国の新指導部による経済や対外政策を巡る不透明感は根強く、買いが続かない状況はここ数日からも明らかであった。

 

連日、中国・香港株は寄りで高く付けた後、上げ幅を縮小する場面が続き上値が重い展開であったが、ここにきて市場は再び「No」と突き付ける結果となった。中国本土銘柄から成るハンセン中国企業株(H株)は前日比5.56%安、週間では8.98%安とハンセン指数を上回る下落幅となった。

 

党大会後、顕著に資金流出がみられた中国株と人民元を鑑み、中国当局は投資家の信頼回復に努める姿勢を示し、週末までの共産党大会のトーンとは打って変わった情報発信に市場はやや困惑していた。ただ、現状は当局の声明に留められており、具体的な政策措置が講じられるとは言い難い状況が続いていた。

 

また、今週に入って、新型コロナ感染流行の最初の発生源である武漢市や中国東部沿岸の工業地帯などで新たなロックダウン措置が講じられている。

 

習氏「1強」がいっそう鮮明となった結果、「ゼロコロナ」政策をはじめ施策判断の問題点が軌道修正されず、経済の失速や対外的な軋轢が深まるリスクが大きいとみられる。党大会閉幕以降、ロックダウンが更に厳しく実施された現状は、外国人投資家の資金撤退が長期化するリスクも容易に考えられる結果となった。

 

中国本土株市場は上海総合指数は6ヵ月ぶりの安値を更新し、前日比2.25%安の2,915.93、CSI300指数は同2.47%安の3,541.33で引けた。ほぼ全セクターが売り優勢となり、為替相場では人民元レートが再び人民元安に振れたこともネガティブに働いた。中国の新体制が、金融市場に親和的でないことが懸念されている。
 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

 

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