(※写真はイメージです/PIXTA)

敗戦後、焼け野原となった日本が奇跡的な復興を遂げ、すさまじい勢いで経済発展を遂げたのはよく知られています。しかしその後は、バブル経済からバブル崩壊を経て、長い景気低迷に入り、いまなお苦しい状況が続いています。それら一連の流れを読み解きつつ、高度成長期と現在にどのような違いが見られるのか比較してみましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

高度成長期は「需要」「供給」の両方が順調に伸びた

経済が成長するためには、「需要」と「供給」が両方ともバランスよく伸びる必要があります。供給力だけ伸びても需要が伸びなければ、商品が売れ残って倒産が増え、失業が増えますし、需要だけ増えても供給が伸びなければ、インフレになってしまいますから。

 

高度成長期は、人々が物を欲していました。家も欲しいし、テレビも冷蔵庫も洗濯機も欲しかったのです。欲しいだけで金がなければ買えませんが、工場が建って労働者として雇われた人々は給料を貰ったので、いろいろな物が買えたのです。

 

当時は日本中に多くの工場が建ち、労働者の奪い合いをするような状況でしたから、給料が毎年大幅に上がり、買える物の量が毎年増えていったわけです。

 

供給も順調に増えました。工場が多数建ち、生産が増えたからですが、それを可能にしたのは技術進歩でした。新しい発明発見があったというよりも、日本経済が活用している技術の水準が上がった、ということです。

 

農村では、トラクターが導入され、農業の労働生産性が向上しました。労働生産性の向上というのは、労働者一人当たりの生産量が増えることをいいます。そこで、余った農業労働者、とくに中学を卒業した若者が都会に働きに行くことが可能になりました。都会では、針と糸で洋服を縫っていた工場にミシンが導入されました。

 

それによって、洋服工場の労働生産性が大幅に向上しました。そこで、企業は労働者に支払う賃金を引き上げることができたわけです。というよりも、労働者さえ雇えば大儲けできると考えた企業が労働者の奪い合いをしたので、賃金の水準が急激に上昇していったのです。

 

高度成長期と比べると、いまは技術進歩が遅くなっています。すべての農家がトラクターを、すべての洋服工場がミシンを持っているので、それを最新式のものに入れ替えたとしても、労働生産性の伸び率は小さいでしょう。

 

望みがあるとすれば、ロボットや人工知能の導入によって労働生産性が飛躍的に向上する可能性でしょう。期待しましょう。

「機械化が容易なもの」の需要が伸びた

高度成長期に人々が欲しがったのは、テレビや冷蔵庫などでした。そうした財は、設備機械を導入することで、労働生産性を飛躍的に高めることができるわけです。

 

しかし、人々が豊かになると財よりサービスを欲するようになります。洋服をある程度持っていると、美容院に行きたくなったり、テレビ等が揃うと旅行に行きたくなったりするわけです。問題は、洋服やテレビは全自動の設備で生産できるけれども、美容院や旅館等は同じ金額の売上を稼ぐために多くの人手を必要とする、ということです。

 

そこで、労働生産性の向上の速度が低下しました。これは仕方のないことですね。さらに、最近になると少子高齢化の影響も出てきました。現役世代の人数が減って労働力不足となることに加えて、高齢者の需要は介護や医療などの労働集約的な物が多いので、若者が自動車に1億円使うより、高齢者が医療や介護に1億円使うほうが、多くの労働力を必要とするのです。

 

そこで最近では、労働者の数も増えないし労働生産性も向上しないので、少し経済が成長しただけで労働力不足となり、それ以上は供給が増やせなくなってしまうわけです。

 

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