「将来はバラ色」と誰もが信じたバブル時代
昭和の終わりから平成の初めにかけて、株価や地価が異常に高騰し、景気が非常によく、人々は日本経済の将来はバラ色だと考えていました。当然、自分の給料も上がっていくだろうと考えて、大いに贅沢を楽しんでいた人が多いわけです。
バブルの背景としては、1985年のプラザ合意を契機として大幅な円高になり、金融が大幅に緩和されたことが挙げられます。金利が下がり、銀行が融資に前向きになったので、借金をして不動産を買うことが容易になったわけです。皆が借金して不動産を買ったので不動産価格が上昇し、それを見た他の人々が「自分も借金をして不動産を買おう」と思うようになったのです。
もっとも、そうなるに至った背景があります。大幅な円高にもかかわらず輸出がそれほど落ち込まなかったことから人々が「日本経済は素晴らしい」と考えるようになったのです。「日本経済は、いままで思われていたより遥かに素晴らしいので、株価や地価が上がるのは当然だ」と考える人が増えたから地価等が上昇したわけです。
日本経済を動かすような人ですら、住宅を買い急ぎ…
バブル当時「株価や地価が高すぎるのではないか」という人は確かにいましたが、「今回はいままでとは事情が違うので、いまの地価や株価は高すぎない」という人も多かったのです。これは、バブル期の特徴のひとつです。バブルの後から振り返るとバブルが繰り返されただけなのに、その時点では「今回だけは事情が違う」といわれていたわけです。
実は、バブルには2種類あります。ひとつは、皆がバブルだと知りながら、「明日は今日より高くなるだろう」と考えた強欲な人々が買う、というバブルです。もっとも、最近ではそうしたバブルは政府が早めに潰すので、拡大することは稀でしょう。最近でいえば、ビットコイン等がそうだったかもしれませんが。
もうひとつが、バブルか否か皆がわかっていないバブルです。崩壊してみて、初めて皆がバブルだったと確信できる、というものです。
あとになってから平成バブル時の株価の動きなどを見ると、到底正常とは思われず、強欲な愚か者が買ったのだろう、と想像している若い人もいるでしょう。しかし、そうではなかったのです。
日本経済を動かしているような賢い人のなかにも「急いで買わないと自宅が買えなくなる」と考えてバブル当時に家を買った人が大勢いたようです。バブルだと思っていれば、バブル崩壊後の暴落した価格でゆっくり買えばいいのですから、そうした人はバブルだと思っていなかったのでしょうね。