いま起きているのは「円安」というよりも「ドル高」
日銀の金融緩和に関する大手メディアの論説記事では、為替に関して円安の是正を求める記事が目につきます。
たとえば「(中略)経済政策の「第1の矢」として異次元緩和が打ち出され、どっしり固定されることになった。本来は機動性がある金融政策を固定してしまえば、マクロ経済の調整弁は為替相場にならざるを得ない。
米連邦準備理事会(FRB)が想定よりも早く利上げを停止すれば今度は急激な円高になるだろう。海外情勢に振り回されて円安と円高を繰り返せば、日本経済はかえって不安定になる。」との論説があります。
まず、いま起きているのは「円安」というよりも「ドル高」です。 図表2では、年初来の為替レートの変化率を見ています(対米ドル)。
年初来で見て、円は米ドルに対して22.4%下落しています。他方で、ニュージーランド・ドルは18.4%下落、韓国ウォンは16.8%下落、スウェーデン・クローナは19.7%、ノルウェー・クローネは17.2%、英ポンドは16.9%、ユーロと豪ドルは14.2%それぞれ下落しています。
現在は、世界の多くの中央銀行がこぞって数年~数十年ぶりの利上げ幅で引き締めを行っています。しかし、ドル高が続いています。他国がそろって利上げをしてもドル高が収まらないのに、日銀が金融緩和を止めれば、ドル高が反転するとは限りません。
それでも日銀に金融緩和の出口を求めるのなら、日銀がどれほど利上げをすればドル安(米ドルに対しては円高)になるのかを示す必要があるでしょう。