還暦筋トレーニーが解説「若いエリートが筋トレにハマる理由」

「変わる」ことと「変える」こと⑤

還暦筋トレーニーが解説「若いエリートが筋トレにハマる理由」
(※写真はイメージです/PIXTA)

なぜ最近の若いエリート君たちは揃って筋トレにハマるのでしょうか。還暦から筋トレを始めた城アラキ氏が著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)で解説します。

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筋トレは簡単に成果は上がらないが故に

■「身体という限界」

 

なぜ若きIT系起業家君が、そして表参道を歩く怪しいお父さんが、筋トレに励むのか。合気道家でフランス哲学者の内田樹先生のこんな文章を見つけて、少し納得した。

 

<ふつうの消費行動は『誇示型』と『享受型』の両方の性質を備えている。フェラーリでアウトバーンを疾駆するのは、半ば誇示的で、半ば享受的である。スカラ座のバルコニーでオペラを鑑賞するのは、半ば誇示的で、半ば享受的である。

 

しかし、享受的消費は「身体という限界」を有している。どれほどの美食でも一日に五食も食えば、身体を壊す。フェラーリを運転できるのも最大一日24時間までである。ぶっつづけで運転してもよいが、遠からず過労死するであろう。どれほど衣装道楽でも、着られるのは一度に一着だけである。

 

一度に二着着ると『百年目』の番頭さんみたいになる。実体経済というのは、「身体という限界」の範囲内でなされる消費活動をベースにした経済活動のことである。実体経済が空洞化しているというのは、消費活動における「身体という限界」の規制力が弱まっているということである>(ブログ「内田樹の研究室」2008-02-12より)

 

デジタルな記号のなかで金を稼ぐIT系の若いエリート君たちにとって、モノと金が実際に動く実体経済なんて、利益効率の悪い過去の遺物だ。そんな世界のなかでは、仮にフェラーリですらすでに欲望をかき立てられない。だからこそ最近では、得ることより捨てること=断捨離の方が知的そうに見えるくらいだ。

 

そして内田先生のこの文章から10年が経っての筋トレブームである。こんな時代のなかで、身体が外に向かおうとすれば確かに限界がある。結果、100着のブランド品のジャケットも、三つ星レストランで開ける100本の「サロン」も、ジムで流す汗と1杯のプロテインにかなわない。

 

なぜなら、自分の肉体とは、最後に残された唯一の秘境だからだ。ここには今まで経験したことのない発見の旅がある。逆説的だが、その旅には「身体という限界」がない。

 

■彼らのエネルギーは炭水化物でなく不安

 

ところで私、小才の利く若い子が勝ち上がる姿は漫画的で面白いと思う。が、うらやましくはない。原作家という前近代的で超職人的な手仕事のオジサンはやっぱり思ってしまうのだ。

 

パソコンと前頭葉だけで君が稼げるのも、世界のどこかで、誰かが実際に手を動かし、絶望工場のなかで実体経済を支え続けているからだと。オジサンは意外にその事実に知らん顔はできないのだよ。だから君たちにちょっとイヤミを言っておこう。

 

なぜ若い「成功者」が筋トレに熱中するのか。彼らを突き動かしているのは炭水化物のエネルギーではなく不安だ。思いつきと行動力だけで自分が成功したということは、同じように自分も簡単に追い落とされるということだ。

 

「百鍛千錬」という言葉がある。日本刀を100回鍛えて、1000回練るという意味から鍛錬という言葉が生まれた。この鍛錬と、わずかな神の恩寵があることが、かつては成功への唯一の条件だった。

 

それが変わってしまった。鍛錬と無縁な方法で成功を経験してしまうと、不安も大きいのではないだろうか。生き物としての人間の心と体はどこかでバランスをとる。不安は、地道過ぎる無駄な努力=筋トレを必要としているに違いない。最近いちばんのお気に入り、ジグムンド・バウマンのセリフ。

 

「ゲオルク・ジンメルがはるか昔に指摘したように、ものの価値はそれを獲得するのに必要とされる犠牲の大きさで測られる」

 

矛盾するようだが、筋トレがとてもたやすく、簡単に成果が上がるなら、誰もこれほどには熱中しない。

 

城 アラキ
漫画原作家

 

 

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本連載は、城アラキ氏の著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

負けない筋トレ

負けない筋トレ

城 アラキ

ブックマン社

『ソムリエ』『バーテンダー』など、数々のお酒にまつわる傑作漫画の原作を手掛けてきた著者は自他ともに認める酒呑みであり、美食家だ。3日に一度は暴飲暴食。仕事柄、1日の歩数が500歩なんてザラだった。運動もしない日々を…

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