(※写真はイメージです/PIXTA)

早稲田大学名誉教授・浅川基男氏の著書『日本のものづくりはもう勝てないのか!?』より一部を抜粋・再編集し、日本の「材料とものづくり技術」について見ていきます。

「製品」では台湾・韓国・中国に後れを取る一方で…

最終ユーザーに直結する製品および情報システム産業では、残念ながら台湾・韓国・中国の後塵を拝するようになってしまったが、世界に占める日本の素材・部材・部品のシェアは現時点でも大きく、一部では60~100%に達している。その品質も格段に評価が高い。

 

高度な素材・部材・部品産業は、ほとんどが国内にその拠点があり、「部品組み立て産業」や「部品集積産業」と比較して、より研究・開発要素が高い。

 

中間財(部材と部品)を供給する「川上産業」は簡単には技術移転しにくく、日本企業の占有率は増している。2019年ノーベル賞を受賞した吉野彰博士が「組み立て産業が衰退しても中身の基幹的な部品や材料を担う川上産業は健闘している」と述べている点は心強い。

 

材料が次世代の技術開発のボトルネックになっていることは言を俟たない。多機能で高度な科学を駆使したマテリアル「知材」(三菱総研造語)が今こそ必要である。

 

以下に紹介する有力企業に共通するのは、独自な素材・部材によりonly one型商品を持ち、それらを世界のブランド化した点にある。

 

江戸時代の野田市の有力醸造業者であった茂木一族らは「野田醤油株式会社」を起し、醤油商標の亀甲萬を社名・キッコーマンとした。かつては日本の日本人のための醸造メーカーとの印象が強かった。しかし今では独自の伝統製法による醸造発酵技術により食文化を世界に広め、海外事業の売上比率60%、営業利益の70%を叩きだすまでに至ったのは驚きでもある。

 

信越化学工業は、半導体産業のコメと言われるシリコン・ウェーハーで、高品質・高生産性により増収・増益をはかり、世界のシェア首位をキープしている。半導体に関連して、筆者は社名すら知らなかった企業に、20年前の浅川研究室の学生が入社した。

 

「ディスコの常識は世間の非常識」との企業文化を掲げ続け、ウェーハーの半導体チップの超極薄砥石やレーザーによる切断や装置では、現在オランダ・米国などを抑え世界の需要をほぼ独占している。

次ページうまい料理は日本の卓越した「食材・料理法」にある

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『日本のものづくりはもう勝てないのか!?』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※「障害」を医学用語としてとらえ、漢字表記としています。

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