前回に引き続き、入居者回転率を下げる方法を見ていきましょう。今回は、入居期間を延ばすための具体的な利益還元サービスを紹介します。

入居年数等に応じて「特典」をプレゼント

前回説明した「入居者アンケート」を実施して解約ニーズをつかんだら、入居期間を延ばすための具体的なサービスを行っていきます。押さえるべき点は、入居年数(お得意様)に応じて利益還元(投資)することです。

 

最近はどの業界もポイントサービスを当たり前のように取り入れています。たとえばTSUTAYAでは、Tカードの1年ごとの更新時に更新料300円を支払うと1000円分のレンタル代の割引特典などがもらえます。それと同じように、入居ポイントがたまったら商品と交換するイメージです。

 

入居ポイントを還元するタイミングは重要です。効果的なのは更新の時期を狙い、アンケートとともに行う方法です。

 

筆者の会社が所在する関西エリアは、京都など一部の地域を除いて更新料はありませんが、全国的には2年更新が一般的だと思います。したがって2年更新なら2年ごとに、入居特典をプレゼントするのです。

 

ただし、滞納をはじめとしたトラブルを起こした入居者は除外したほうが賢明です。

 

入居特典の内容は、家賃や入居年数に応じて調整する必要がありますが、入居満足度を高める効果的なプレゼントとして次のようなものがあります。

 

●選べる設備(洗面化粧台、温水洗浄便座など)

●選べる家具(テーブル、ソファなど)

●選べる家電(ドライヤー、電動歯ブラシなど)

●選べるチケット(旅行券や宿泊チケットなど)

●商品券(3万~5万円)

●フリーレント家賃1か月分

 

こうした特典をベースに、アンケートの結果も踏まえて既存入居者に提供すると喜んでもらえるでしょう。

特典の費用は「家賃1か月分程度」が妥当

既存入居者に利益還元する狙いは、「心理」にうまく働きかけることです。更新が2年の場合、特典獲得にも2年間の居住という期限を設けることで、特典をもらえるまでは住もうという心理的効果が働くものです。

 

半年後に引っ越しを検討していた人も、特典をもらってからでも遅くはないと考えているうちに、その半年で気が変わって引っ越しをやめるということもあるでしょう。

 

何度も言いますが、入居者が退去すれば家賃は下落し、空室損失も平均5か月分発生します。その損失の一部を有効活用し、あらゆる手段を講じて入居満足度を高め、入居期間を引き延ばすのです。

 

入居特典の費用負担は、おおむね家賃1か月程度と考えていいでしょう。あまりにも価格の安いプレゼントでは退去を押しとどめるほどの心理的効果は期待できません。かといって家賃数か月分に相当するような高価なプレゼントを用意すると投資分の効果が期待できない可能性があります。

 

費用対効果を考えると、家賃1か月分程度が妥当ではないかと思います。その上で、入居年数の長いお得意様に対しては特典をグレードアップしていきます。

 

たとえば単身者向け物件でフリーレントを特典とする場合、2年更新時は1か月分のフリーレント、さらに2年後の更新時はフリーレント2か月分、といったように特典内容を拡充していくと効果的です。

 

単身者向け物件で4年以上住んでもらえれば平均入居期間を大きく上回ることになりますから、特典として計3か月のフリーレントは、退去抑止の対策費用としては格安といえます。なお、更新が1年と期間が短い場合、プレゼントの価格はもう少し抑えるといった調整が必要かもしれません。

 

実は、私自身が所有する物件でもこの入居特典サービスを行っています。サービスを始めて5年になりますが、平均入居期間は格段に延びました。

 

しかし考えてみると、2年ごとにわずか家賃1か月程度をお客様に還元しているだけなのです。それで退去を引き伸ばし、設備の追加を選んでくれた入居者の部屋については価値の向上にもつながるわけですから、これほど費用対効果の高い方法を取り入れない手はないでしょう。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『入居希望者が殺到する驚異の0円賃貸スキーム』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

入居希望者が殺到する 驚異の0円賃貸スキーム

入居希望者が殺到する 驚異の0円賃貸スキーム

池田 建学

幻冬舎メディアコンサルティング

大家が抱える最も悩ましいリスクは空室だが、これまで賃貸不動産で客付けをしようと思えば、「家賃を下げる」「リノベーションなどをして付加価値をつける」「広告料を仲介会社に多く払う」方法しかありませんでした。 にもか…

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