前回は、「実効賃料」をもとに家賃を戦略的に下げていく方法を説明しました。今回は、不動産投資分析の指標となる「3つの空室率」について見ていきます。

多くのオーナーが意識するのは「瞬間空室率」だが…

空室率を投資分析の指標として参考にする場合、より専門的にいえば3つの空室率を理解する必要があります。

 

①瞬間空室率

②稼働平均空室率

③収入空室率

 

多くのオーナーは、直感的に①の「瞬間空室率」で考えていると思います。

 

瞬間空室率というのは、その瞬間(調査時点)での空室率のことです。式で表せば、「瞬間空室率=空室数÷総戸数」となります。100室のうち10室が空いている場合、空室率は10%という考え方です。しかしこれは、実態を正確に反映しているとはいえません。

投資実態を最も正確に反映する「収入空室率」

次に「稼働平均空室率」は、1年間の全戸数の稼働に対して空室の月数がどの程度かを計算することです。「稼働平均空室率=解約戸数×平均空室月数÷総戸数×12か月」で算出できます。たとえば、総戸数20戸のマンションで1年間に4戸解約し、解約毎に6か月間の空室期間があれば、稼働平均空室率は10%になります。

 

この式の分子である「解約戸数」と「平均空室月数」が少ないほど、稼働空室率が減少することが理解できます。

 

最後の「収入空室率」は筆者も日常的に使用している空室率で、月数ではなく収入ベースで計算します。「収入空室率=(GPI-EGI)÷GPI」で算出できます。

 

モデルケースで考えると、

 

GPI(総潜在収入)1200万円

EGI(実効総収入)1080万円

(1200万-1080万円)÷1200万円=10%

 

となります。

 

この収入空室率はGPI(総潜在収入)とEGI(実効総収入)の差分を使用するため、「賃料差異」や「滞納未回収」も含まれます。ということは「稼働平均空室率」が10%の物件であっても、家賃を値下げしたり、滞納損失があったりすれば、当初のGPIから10%以上の収入ダウンがあったことになります。

 

つまり、「収入空室率」で見れば、空室月数が同じでも収入が少ないということです。よって事業計画などの予算に対しての実績は、「瞬間空室率」や「稼働平均空室率」よりも、「家賃空室率」のほうがより明確化しているといえます。

 

空室率の本質を理解して、本格的な賃貸マンション経営の手法を身につけてもらえればと思います。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『入居希望者が殺到する驚異の0円賃貸スキーム』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

入居希望者が殺到する 驚異の0円賃貸スキーム

入居希望者が殺到する 驚異の0円賃貸スキーム

池田 建学

幻冬舎メディアコンサルティング

大家が抱える最も悩ましいリスクは空室だが、これまで賃貸不動産で客付けをしようと思えば、「家賃を下げる」「リノベーションなどをして付加価値をつける」「広告料を仲介会社に多く払う」方法しかありませんでした。 にもか…

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