前回は、差別化の第一歩となる「競合物件の調査」について説明しました。今回は、小さな設備投資で物件価値と競争力を高める方法を紹介します。

お金をかけない「小さな設備投資」で賃料アップを図る

物件価値を高めるために、不動産投資の方程式「V=I÷R」を使います。「V(不動産の価値)」を高める唯一の方法は、「I(営業純利益・NOI)」を最大化させるということでした。

 

NOIの改善といえば、空室対策による家賃収入アップと、運営費の削減を第一に考えるはずです。これは当然であり、キャッシュフローの考えを前提に、収入アップと支出の削減を常に行わなければなりません。

 

しかし、収入アップの方法は空室対策だけではありません。設備投資やリノベーションといった資本改善によって月額家賃をアップし、GPI(総潜在収入)を押し上げることが可能です。GPIが向上すれば物件の収益最大値が引き上げられ、結果としてNOIの向上につながることになります。

 

たとえばモニター付きインターフォンと温水洗浄便座を設置すれば、平均で月額家賃を2000円アップ(あるいは下落抑制)できます。設置費用を8万円とすると、投資効率は2000円×12か月÷8万円×100=30%。8万円の投資が3.3年で回収できるということです。物件の競争力が高まって入居が早く決まり、空室損失も圧縮できたとすれば、NOIはさらに上昇します。

 

ではこの場合、物件価値(売却価格)についてはどうでしょうか。

 

仮に期待利回りを8%とした場合、方程式(V=I÷R)を使うと、2万4000円÷8%=30万円。つまり8万円の投資で売却価格が30万円アップした計算です。3倍以上の投資効果が見込めるわけです。

 

さらに同じ設備投資を10部屋同時に行った場合、2万4000円÷8%×10戸=300万円となり、物件価値(売却価格)は300万円アップします。これが攻めの投資、資本改善の魅力です。

適正家賃の修正は「管理会社」に相談しながら進める

オーナーの中には原状回復工事と資本改善を混同されている方がいますが、両者は明らかに違います。資本改善は付加価値によって家賃を維持・向上できますが、原状回復工事は元に戻すだけですから、相場に合わせて適正家賃に修正しなければなりません。

 

適正家賃に修正する経営判断ができずに家賃を維持し、入居が決まらずに空室損失が膨らむと、逆にNOIを引き下げることになってしまいます。

 

数値分析を伴った資本改善は、いくら投資額が少ないからといってもオーナー個人の判断では実際には難しい面もあるでしょう。少ない投資で最大の成果を出すためにも、賃貸経営のプロが在籍する管理会社に運用の相談をされることをお勧めします。

 

管理会社の選び方は簡単ではありませんが、良し悪しを見極める方法の一つとして、その会社の代表者に経営方針を確認してみてください。管理業務に特化し、オーナーと同じ立場で、オーナーの利益を追求した賃貸経営を目指していれば、代表者の言葉の端々からそうした考えやビジョン、意気込みが感じ取れるはずです。

 

具体的に言えば、オーナーの物件価値を高めるためにはNOIの向上が必須であり、NOIを高めるために「収入アップ」と「運営費の削減」の両輪での対策が求められる、このことを理解している管理会社であれば比較的安心して任せられると考えていいでしょう。

 

信頼できるパートナーを見つけ、資本改善を含めた空室対策、競合対策を実施し、大競争時代に勝ち残る賃貸マンション経営をぜひ実現させてほしいと思います。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『入居希望者が殺到する驚異の0円賃貸スキーム』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

入居希望者が殺到する 驚異の0円賃貸スキーム

入居希望者が殺到する 驚異の0円賃貸スキーム

池田 建学

幻冬舎メディアコンサルティング

大家が抱える最も悩ましいリスクは空室だが、これまで賃貸不動産で客付けをしようと思えば、「家賃を下げる」「リノベーションなどをして付加価値をつける」「広告料を仲介会社に多く払う」方法しかありませんでした。 にもか…

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