入居満足度の向上には「潜在ニーズ」の分析が不可欠
既存入居者の満足度を高めるためには、「入居者アンケート」によって解約ニーズを把握する必要があります。
他の業界の人が聞くと当たり前すぎるでしょうが、アンケートすらやっていないのが賃貸業界です。サービス業にアンケートは不可欠です。サービスの質を維持・向上させ、入居満足度を高めるためにも、アンケートを利用して既存入居者の潜在ニーズを分析しなければなりません。
アンケートを実施する際に大切なポイントは三つです。
①毎年決まった時期に実施する
②アンケート回答者にギフトをつける
③感謝の手紙を添える
まずアンケートのタイミングは、入居者によって実施する時期を決めておくといいでしょう。お勧めは、更新時期の半年前にアンケートの時期が来るようにする方法です。
たとえば1月に入居した人の場合、アンケートの時期を6月に設定すれば、更新の半年前に実施することになります。そうすれば、入居ポイントの還元とアンケートのタイミングを合わせることが可能となります。
アンケートを回収する際には、QUOカード1000円分などの特典をつければ回収率が高まるでしょう。
オーナーが自身の所有物件に実際に居住しているケースを除き、オーナーが入居者と直接顔を合わせたり、話をしたりする機会は少ないものです。アンケートという機会を利用して、日頃の感謝を伝えるのは得策といえます。
アンケートの具体的な質問項目は、退去の予定(予定があればその時期)、住み心地、スタッフの対応、困りごとや不便なことはないか、設備面での希望、などになります。チェック項目に加えてフリースペースを設け、自由に記入してもらうのも潜在的なニーズや不満を聞き出す方法のひとつです。
場合によっては「家賃の値下げ」「設備更新」も検討
アンケートを実施した結果、退去を検討しているとわかれば、その理由を実際に確認してみましょう。家賃に不満を抱いているということであれば、これまでの説明と矛盾するようですが、下げるのも退去抑制の一つの手段です。
長く住んでいるほど物件価値は低下し、そのあいだ、何も手間をかけていなければ家賃は入居時と比べて相対的に高くなっています。入居者が退去すれば、0円賃貸という強力なシステムを導入しない限り、値下げをするか、再投資をしなければならないのです。
家賃を下げて退去を抑制できれば空室損失を回避できるわけですから、値下げをせずに退去につながるより得策であるのは間違いありません。ここまで本書(詳細は書籍をご覧ください)で家賃を下げるのはNGとお伝えしてきましたが、このケースでの値下げは質が違います。
あるいは設備の更新を提案することで、家賃の値下げと退去の両方を回避できるかもしれません。この場合、退去の抑制、家賃の維持、物件価値の向上という三つの側面で成果を出せたことになります。