写真:GTACスタッフ


途上国に多く見られる国有企業のガバナンスの甘さや政治との癒着は、経済発展の大きな妨げですが、民主主義が未熟といった理由もあり、それらが公になりにくいのも実情です。そうした中、2015年1月に民主的に政権交代をしたスリランカでは、旧政権下での不正が次々と明らかにされています。今回はスリランカの国有銀行にまつわる問題点を概説します。

とにかく甘やかされてきたスリランカの国有銀行

好景気には利益の再投資で自己資本を十分に増やすことができ、不景気には政府が手を差し伸べてくれるスリランカ国有銀行に、緊張感というものはあるのだろうか。

 

スリランカ政府は、最大手の国有商業銀行であるセイロン銀行(Bank of Ceylon)と人民銀行(People’s Banks)を過去30年間で6回も救済している。金融業界のルールでは全ての銀行は平等であるはずだが、これら2つの大手国有銀行は、政府と極めて密接な関係にあるといえる。

 

この2行を含め資産額が多い上位3行といくつかのその他金融機関は、スリランカ財務省の手中にある。また、金融システムの一要素でもある年金基金のうち、最大手の2つである従業員積立基金(EPF)と従業員信託基金(ETF)についても政府が管理している。

 

国有銀行は、本来なら利益を出せるはずなのに悪戦苦闘している。国有銀行の内部留保分はバランスシートを拡大するには十分ではなく、また、国家への貸付に依存して、経済成長の担い手であるはずの民間企業を遠ざけた。そうして、甘やかされた国有銀行の役員たちは現代の銀行業界から消えていき、民間銀行がマーケットシェアを掴み取っている。国有銀行も改革を進めてはいるものの、その歩みは実に遅い。むしろ国有銀行の危機が静かに増幅していると言えるだろう。

不良債権の山に埋もれるLankaputhra銀行

具体例をひとつ見てみよう。国有銀行であるLankaputhra政策投資銀行(以下、Lankaputhra銀行)は、中小企業支援・地域経済活性化・雇用創造という壮大な目的のもと誕生した。しかしながら、その内情を見抜くことは一見簡単ではない。

 

Lankaputhra銀行の実態は、銀行と呼ぶにはほど遠い。この銀行は国から与えられた資金の大半を国債に投資するような機関であり、政府の観点から言えば、大金を融資しながらもその負債を回収しようとしなかった銀行だ。

 

次回は、Lankaputhra銀行が抱える最大の不良債権となったTri-Star社への融資についてお伝えする。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年8月に掲載した「How to Rob a Bank」を、翻訳・編集したものです。

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