写真:GTACスタッフ

巨額な不良債権に苛まれながらも、最大の不良債権については返済を執拗に迫ることがなかったLankaputhra銀行。今回は、そのLankaputhra銀行と、同じく国有銀行であるセイロン銀行の奇異な利益の生み方をご紹介します。

融資の半分が不良債権でありながら利益が出ている?

Lankaputhra銀行は2006年の設立時に、政府予算から15億Rsの資本金を受け取った。この銀行の目的は、中小企業への融資、地域経済支援、そして、その過程の中で雇用を創出することであり、2008年1月には国が管理するスリランカ中小企業銀行(以下、SME銀行)を株式交換により吸収合併した。

 

SME銀行もLankaputhra銀行と同時期に同額の資本金で設立した銀行だ。合併によってLankaputhra銀行の資本金は倍になり、新たな金融規制で決まった資本金最低額の25億Rsへの到達を可能にした。さらに、翌年の2009年1月Lankaputhra銀行は政府機関であるPrivate Sector Infrastructure Development株式会社を吸収合併している。

 

年度の締めくくりにあたる2014年12月、Lankaputhra銀行は創立以来9年連続で黒字となったことを発表。その年は1億7900万Rsの利益を生んだ。融資の約半分が不良債権でありながらも銀行が利益を上げているという奇妙な状況はなぜ可能なのだろうか。

 

79億Rsの資産ベースのうち、55億Rsは国債(REPOs)と他行の定期預金に投資されている。顧客への融資はわずか20億Rsだ。通常は顧客への融資分が銀行の資産の6割ほどを占めるものだが、Lankaputhra銀行の場合、その割合は26%に留まり、さらにその半分近くが不良債権となっている。そして、他行の定期預金への投資の中で大きな割合を占めているのは、セイロン銀行にある24億Rs相当の米ドル建ての外貨預金だ。

Lankaputhra銀行に限らない構造的問題

セイロン銀行もまた政府機関である。この銀行は設立当時からドイツ政府の開発融資機関であるドイツ復興金融公庫(KfW)からの融資を受けており、2018年にはKfWへ借入分を返済する必要がある。セイロン銀行やLankaputhra銀行のような機関は通常、特定のセクターに対する低金利融資を支援する目的で創立されている。しかし、Lankaputhra銀行はこのような支援をさほどしていなく、セイロン銀行についても、KfWはもうスリランカから撤退しているというその事実が現状を物語っている。

 

セイロン銀行の実態とは見合わない2014年分の6億600万Rsもの金利収入のうち、3億9400万Rs(金利収入の65%)は、政府から与えられた資本金を政府短期証券および長期証券に投資し、KfWからの借入金をドル建ての外貨預金の運用に回すことにより生まれた。セイロン銀行が運用する定期預金は、全金利収入の3分の1以上を生み出したのだ(2014年の金利収入総額である6億600万Rsのうち2億1300万Rsにあたる)。


次回は、従来の銀行とは異なるLankaputhra銀行特有の課題について見ていきたい。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年8月に掲載した「How to Rob a Bank」を、翻訳・編集したものです。

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