遺産分割協議をやり直したい
次に、一度成立した遺産分割協議の内容に納得できない場合、どうすればよいのかを見ていきましょう。
相続人全員で遺産をどのように分けるかという話し合いをしたものの、後になって「いや、この分け方はちょっと…」と思い直すこともあるでしょう。
結論として、遺産分割協議のやり直しは可能です。
ただし、3つの注意点があります。まず1つ目は、相続人全員の合意が必要ということです。これは当たり前ですね。一度は相続人全員で話し合いをして分け方を決めたわけですから、一部の人だけで内容変更をするなどということはできません。やり直しをするからには、また全員で話し合う必要があります。
2つ目は、利害関係のある第三者がいる場合には、その人の権利を侵害することはできない、ということです。
たとえば、遺産分割協議を経て、ある特定の不動産をAさんが相続したとしましょう。Aさんは、自分が相続したその不動産を売却してしまいます。売却後に遺産分割協議がやり直しになって、売却済の不動産を「Bさんのものにしようよ」という合意ができたとしても、肝心の不動産は売り払っていますから、Bさんのほうに戻すことはできません。
法律面のちょっと難しいところを説明すると、条文では、「遺産分割協議の効力は、被相続人が亡くなったときまでさかのぼる」と掲げられています。
そのため、「さかのぼる=“全部を巻き戻す”のだから、遺産はすべて手元に戻ってくるはずではないか?」という理解ができるかもしれません。しかし上記の例など、すでに自分たちの話し合いにおいて遺産を分けたうえで売却を済ませたわけですから、無関係の人の権利を侵害することはできません。「遺産分割協議がやり直しになったから、売却した不動産を返せ」はナシなのです。
3つ目は、贈与税などの税法上の問題が発生する可能性がある、ということです。これは最も注意が必要です。
1つ目に述べた「相続人全員の合意が必要」については、相続人全員で話をすれば済む問題ですし、2つ目の「利害関係のある第三者の権利を侵害することはできない」についても、常識的に考えればわかりそうな話です。しかし、3つ目の「税金」ついてはどうでしょうか。
一度、遺産分割協議の中で誰がどういうふうに相続する、と遺産の帰属先を決めたわけです。それを後々変更する場合、すでにその財産を帰属した人から、遺産分割協議によって改めて帰属する人へと、その権利が移転していきます。
法律的に考えると、遺産分割協議はその被相続人の死亡までさかのぼるわけですから、いったん白紙に戻して再度遺産の分配をしているイメージを持つかもしれません。
しかし、税法上ではそのような見方がされないことがあります。一度はAさんが取得した不動産を、遺産分割協議をやり直してBさんが取得するとなると、「AさんからBさんへと贈与された」と見なすことがあるのです。
すると、新たに不動産を取得したBさん、つまり「もらったほう」のBさんには、贈与税が課税される可能性があります。相続税に比べて贈与税の税率は高く、時として、とんでもない金額を課されかねません。安易に何回も遺産分割協議を行ってしまうと、このような課税の問題が発生することがあるので、本当に気をつけましょう。
まとめ
以上、今回は遺言書や遺産分割協議の内容に納得できない場合の対処法について解説しました。まとめると、下記のようになります。
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【遺言の内容と異なる遺産分割をするときの条件】
①被相続人が遺産分割を禁じていないこと
②相続人全員が遺言の内容をしったうえで、遺言内容と違う分割を行うのに同意していること
③受遺者がいる場合は、受遺者の同意も必要
④遺言執行者がいる場合は、遺言執行者の同意も必要
【遺産分割協議をやり直すときの注意点】
①相続人全員の合意が必要
②利害関係のある第三者がいる場合、その人の権利を侵害することはできない
③贈与税などの税法上の問題が起こる可能性がある
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佐伯 知哉
司法書士法人さえき事務所 所長
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