なぜネット銀行・ネット証券は相続で見落とされやすいのか
【事例】遺産分割協議完了後、亡き父が保有するネットバンクの口座が発覚
去年、60代の父が急逝しました。父はかなり大雑把な性格で、自宅不動産や預貯金といった財産に関わる重要書類を放置していました。これらの書類を家族総出で必死に収集し、ようやく遺産分割協議が完了、相続手続きに区切りがついたと思っていました。
ところが、書斎の古いパソコンを始末しようとしたところ、そこに残っていたデータから父名義のネットバンクの口座があることが判明しました。調べたら1,000万円近い残高があり、遺産分割協議のやり直しの必要性が出てきました。
ほかの家族からは「知っていたのにわざと隠したのではないか」などと疑われ、関係が悪化してしまい、大変つらい思いをしています。
従来の銀行口座であれば、通帳や金融機関からの郵便物といった「目に見える手がかり」がありました。一方、ネット銀行やネット証券は、通帳がなく、取引報告書も電子交付が原則です。取引はすべてスマートフォンやパソコン上で完結するため、相続人が意識して探さなければ存在に気づけません。
司法書士の立場からとくに問題と感じるのは、これらの口座が遺産分割協議後に発覚するリスクです。あとから新たな財産が見つかれば、協議書を作り直す必要が生じ、相続人間で「聞いていない」「知らなかった」といった不満が生まれ、上記の事例のように、関係がこじれる原因にもなります。
司法書士はどうやって「ネット口座の捜索」を行っている?
では、司法書士をはじめとする相続手続きの実務家は、どのようにして「ネット口座」を探しているのでしょうか? 具体的に紹介します。
◆スマートフォン・パソコンの確認
現在の相続では、故人のデジタル機器は重要な資料です。ネット銀行・ネット証券のアプリが入っていないか、金融機関の公式サイトが閲覧履歴やブックマークに残っていないかを確認します。証券口座の場合、アプリが唯一の手がかりになることもあります。
◆メール履歴の検索
ネット金融機関は、口座開設時や取引のたびにメールを送信します。故人のメールアカウントが確認できる場合は、「銀行」「証券」「口座」「取引」などのキーワードで検索すると、口座の存在が判明することがあります。
◆キャッシュカード・書類の確認
ネット銀行であっても、ATM用のキャッシュカードが発行されていることがあります。財布や書類棚からカードや申込書類が見つかり、利用していた金融機関が特定できるケースも少なくありません。
◆証券保管振替機構(ほふり)への照会
上場株式や投資信託が疑われる場合には、証券保管振替機構への情報開示請求という方法があります。これにより、故人がどの証券会社に口座を開設していたかを確認できます。相続人であることを証明する書類が必要ですが、実務上は非常に有効な手段です。
見つかった後の相続手続きは?
ネット銀行・ネット証券であっても、相続手続きの基本は通常の金融機関と変わりません。一般的には、戸籍謄本一式、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などを提出し、解約や名義変更を行います。
ただし、金融機関ごとに必要書類や手続きの流れが異なるため、事前の確認が欠かせません。
「事前対策」の重要性
相続発生後にネット口座を探すのは、相続人にとって大きな負担になります。司法書士として強く感じるのは、生前に利用しているネット銀行やネット証券を書き出しておくだけで、相続は格段にスムーズになるという点です。エンディングノートに記載しておくだけでも、相続人の混乱やトラブルを防ぐことができます。
相続の現場では、「通帳がないから大丈夫」と考えていると、あとからネット銀行やネット証券口座が見つかることがあります。司法書士の立場からいえるのは、最初から「ネット口座があるもの」として調査する姿勢が重要だということです。
見えない財産を見逃さないことが、円満で確実な相続への第一歩になります。
佐伯 知哉
司法書士法人さえき事務所 所長
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
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