退任時の誓約書の署名を"拒否したい"
現在、会社の取締役に就任している相談者は、退任するにあたり会社から退任時の誓約書の署名を求められています。内容としては以下のとおりです。
(1)在職中に扱った秘密情報や記録媒体等の一切を全て返却し、私的に保管しておらず、第三者に貸与や譲渡していない。
(2)在職中に知り得た秘密情報は、退職後でも開示、漏えい、使用しない。万一、開示、漏えい、使用した場合、差止請求、損害賠償請求、刑事告訴等の法的措置をとることに異議はなく、会社が被った損害の一切を賠償する。その秘密情報とは、①財務・人事情報、②技術情報、知的財産権に関する情報、③顧客情報、④他社との業務提携、技術提携等、貴社の経営戦略上重要な情報、⑤貴社の役員、従業員等、採用応募者および退職者の個人情報、⑥以上の他、貴社により秘密情報として指定された情報
(3)前項の秘密情報を保持するために、退職後も2年間は、直接・間接を問わず、貴社の許可なく貴社との競業関係のある他社(その提携先も含む)に就職(役員への就任も含む)すること、または自ら協業する事業を開業・設立しません。
この内容について、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の4点について相談しました。
- そもそも、退任時の誓約書への署名は必ず必要なのか
- (1)の内容については、特に問題がないように見えるが、法的な懸念点等はあるか
- (2)に記載されている秘密情報の範囲が広すぎる印象だが、問題がないか
- (3)の内容については、次の就職先の業務範囲を狭める懸念があるが、問題がないか
退任時の誓約書に署名する“義務はない"
退任時に会社側から、取締役を辞任するためには誓約書への署名押印が条件である等と告げられることがあります。しかし、取締役を辞任又は任期満了で退任するに当たって、会社に対して誓約書を提出することは退任の要件ではありません。退任時に誓約書に署名押印しなければならないとの法的な義務があるわけではありません。
したがって、退任時の取締役は会社に対して誓約書の署名押印を断ることができます。
会社側としては、株主総会で取締役を選任する時点において、取締役任用契約や秘密保持契約などの契約によって、退任後も秘密保持義務などの義務を負う内容の誓約書に署名押印を求めるということが考えられます。
取締役側としては、既に取締役就任時において、誓約書に署名押印しており、退任後の競業避止義務を負う条項などがあった場合には、既に提出した誓約書との間での内容の相違点があるかどうかなどを検討し、誓約書に署名押印して提出するかどうかを決めることになります。