(画像はイメージです/PIXTA)

配偶者のダブル不倫が発覚すると、双方の配偶者が「サレタ側」となり慰謝料請求の問題が複雑になります。さらにその関係が数十年も続いた末の離婚となると、財産分与や老後資金などの問題も絡み、さらに複雑化してしまいます。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、ダブル不倫の末の熟年離婚について若井亮弁護士に解説していただきました。

予め離婚における優先順位を決めておくことが大切

離婚の際に留意すべきポイントは、離婚における優先順位を予め決めておくことです。

 

最終的に裁判で決着をつけるのであれば、裁判官が結論を導き出してくれますので、優先順位を考えることは不要に思えます。しかし、判決がでるまで場合によっては数年単位でかかってしまうこともありますし、裁判官が導き出す判決は、あくまで法的に正しい結論であって、必ずしも当事者にとって妥当な結論とは限りません。

 

そのため、離婚案件においては、調停員という客観的な第三者を交えた話合いにより当事者にとって妥当な解決を図る「調停」という制度によって最終的な解決を導き出すことも多いです。

 

調停は、話し合いによる解決を導き出す場ですので、100%自分に有利な結論に至ることは稀です。よって、譲れる部分は譲って、絶対に譲りたくない部分は死守する必要があります。そのための優先順位です。

 

特に離婚で大きく揉める要因である①お金②不動産③親権のいずれを最優先とするのか予め決めておくと、判断に迷ったときに納得できる結論を導き得ます。

本件において予想される4つの争点

本件において予想される争点は以下の4点です。

 

  1. 離婚の可否
  2. 財産分与の内容(不動産・退職金・慰謝料)
  3. 親権・養育費等子供に関する権利関係
  4. その他ダブル不倫固有の問題

 

以下各争点について詳述します。

 

(1)離婚の可否

本件は裁判上の離婚原因である不貞が存在し、且つ、証拠もありますので、最終的に離婚に至る可能性が高いといえます。

 

他方で、相手方が少しでも相手方自身に有利な離婚をするために、離婚原因そのものを争い紛争を長期化させ、こちらの譲歩を引き出しにかかる可能性があります。その場合、直ちに調停を打ち切って訴訟に移行するか、自分の中の優先順位に照らして、譲れる部分を譲った上で、調停による早期解決を図る等の対応が考えられます。

 

(2)財産分与

【不動産】

本件のようにローンを清算する必要がない場合、一方が住み続け、他方が売却評価額の半分を受け取る方法が一般的です。一方が頭金を多く出している等の事情があれば、その点を分割割合に反映するといった対応を取れることも考えられます。

 

どうしても親権が欲しいという事情があるのであれば、不動産は有償で譲るが、親権と慰謝料の部分で譲歩せずに今後の生活に備えるといった対応もとれます。

 

【不貞慰謝料】

本件は、不貞が相当長期の上、それを証拠によって立証し得るので、100~300万円の慰謝料が見込めるかと思います。

 

また、不貞慰謝料は財産分与の中で検討することもできますが、この点のみを別個独立して請求することができます。

 

【退職金】

退職金は財産分与の対象となり得ます。

 

もっとも、本件のように未だ退職金が支払われていない場合となると、将来退職金が支払われる可能性が高いと評価できる事情が必要です。

 

ここでの可能性は、就業規則、退職までの期間、勤務先の倒産可能性といった要素を考慮して判断されます。

 

(3)親権・養育費用子供に関する権利関係

【親権】

親権は子の福祉の観点(子供も健全な成長を図る観点)から決せられます。

 

不貞行為に及んだからといって、ただちに有責配偶者(離婚の原因を作り、婚姻関係を破綻させた主な責任を持つ配偶者)の親権が否定されるわけではないことに注意が必要です。

 

従前の監護状況、監護への意欲・能力、子の状況・意思、子の生活環境への影響、監護を補助してくれる者の存在等、様々な要因を総合的に考慮して、子の健全な成長にとって適切な親権者は誰かという観点から決せられます。

 

本件では、夫が育児に一切協力していなこと、単身赴任の間、妻が監護を継続したという実績、母親の協力を得られるという事情がありますので、最終的に親権はこちらに移る見込みがあるといえます。

 

もっとも、この点についても相手方があえて争う可能性がありますので、優先順位を考えて、譲れる部分は譲り、親権を確保するという方針を採ることもあり得ます。

 

【養育費】

子どもに障害があるなどの理由で、成人しても自立ができない場合、成人以降の養育費支払義務が認められる可能性があります。

 

他方で、養育費は将来支払われる金銭という性質上、決められた内容どおりの支払が継続するとは限りません。そのため、養育費を請求しないかわりに財産分与の面で優遇してもらうなどの交渉するのも良いでしょう。

 

また、20歳以上で重度の障害を有するのであれば、特別障害者手当を受給し得るので、そういった社会的援助に頼ることも検討すべきです。

 

(4)ダブル不倫固有の問題

ダブル不倫の場合、相手方夫婦の不貞被害者から、不貞当事者にも慰謝料請求できます。

 

本件では、相手方夫から相談者夫に対して高額な慰謝料請求がされる可能性があります。先に相手方夫へ慰謝料が支払われてしまうと、その分相談者夫の財産は減ることになるので、相談者が相談者夫へ慰謝料を請求しても、支払うお金がないといった状況に陥る可能性があります。

 

そのため、ダブル不倫の場合には、速やかに金銭を回収する必要があるといえ、迅速に紛争を解決する要請が強いといえます。

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