重点のみをピックアップして報告する
また、こういう報告形式の場合、1つ1つの活動単位の印象が残る一方で、全体を見失う可能性もあります。まさに木を見て森を見ず、という状態になりがちです。
図表1を見てみましょう。
細分化した活動単位は全部で18個あります。もし、この図(全体に占める各活動単位のボリュームを把握するための例示)を見る前だったら、それぞれの状況を把握できていない段階なので、18個の活動単位それぞれの報告をしてもらいたいという気になるかもしれません。
しかし、この図を見たあとだったら全部の説明はいらない、と思うのではないでしょうか。
事業本部が3つしかないので、事業本部単位で報告を受ければ報告数が少なくて済むのでは、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、大きなくくりにすればするほど、よい部分と悪い部分が混ざってしまい、緻密な経営判断がしにくくなります。そのため、状況はできるだけ細かい単位で把握すべきと考えます。
しかし、あまりにも事業規模に強弱があるなか、全部に時間を費やして報告までしてもらう必要があるかというと、毎月でなく、3ヵ月に1回とか半年に1回でよい内容が含まれているかもしれません。
ここでお伝えしたいことは、経営者は会議の前に、全社業績および、それを構成する各活動単位の業績も細かく把握したうえで、そのなかから気になる重点項目をピックアップし、その内容のみを討議するのがよいのでは、ということです。
つまり、会議を受動的な内容ではなく、経営者にとって能動的なものにするのです。社外役員などの外部者へ報告する場合も同様です。まずは会社全体を俯瞰的に捉え、それを構成する重要な内容のみを選択のうえ、討議の対象にすると同じ時間でもより有意義な会議にできます。
特に経営判断をしようとする経営者にとっては受動的でなく能動的な会議が必須であり、「今回の会議はこの活動単位にフォーカスして議論しようと決める」事前の絞り込みが重要です。
ただし、会議のタイミングではじめて経営者が業績を把握できるような体制では、経営者にとっての能動的な会議はできようがありません。経営者が全体および細かい活動単位までの数値をタイムリーに把握できる体制が、能動的な会議のためには必要です。
川崎 晴一郎
公認会計士・税理士
KMS経営会計事務所・株式会社KMS代表