ときには「やめる」が利益を増やす
経営者が「やめる」選択をするのは、利益を増やすためです。単純な話、万年赤字の事業がある場合、それをやめればその分の赤字は止まります。つまり利益が増えるのです。
仮にすべてが上手くいき、成長が加速し続けているような場合は何もやめる必要がないのかもしれません。
しかしどんなに順調であっても、何の失敗や非効率もなくすべてのことに勝ち続けている会社なんてないはずです。やめることによって利益を増やすポイントはどこかにあるはずです。
また、やめることによって余ったリソース(人員やお金)をほかのチャンスに向けることにより利益を増やすことができるかもしれません。有限であるリソースの選択と集中により、さらなる飛躍の可能性が生じるのです。
ただし経営者も人間である以上、「やめる」選択には心情的な抵抗が否めません。関係者のネガティブな視線も気になりますし、何より、やめるには誰かに迷惑をかけたり誰かを犠牲にしたりしなくてはなりません。
経営者は基本的に、見栄っ張りで、強情で、人情味があって、気風がよくて、熱いハートを持ったよい人です(でないと社員もお客様もついてきません)。
そんな経営者に、誰かを犠牲にする可能性がある「やめる」を決めるべきだというのは酷なのですが、それを理解したうえで私はあえてそう苦言を呈し続けています。
経営者は「自社の永続」、そのための「将来利益の拡大」を常々求めるべきであり、そのためには「やめる」選択をする覚悟も必要なのです。
消費者ニーズの変化の激しい現代においていままでのよい状況が続く保証はどこにもなく、それどころか天変地異や新型コロナウイルス問題に代表される未曽有の環境変化により好況が一瞬にして暗転してしまう可能性すらあります。
そんなときに会社を救うのは過去に溜めた利益です。不確実な未来を考えたら、利益を増やすための目の前の機会を見過ごす余裕なんて本当はないはずです。
「やめる」が利益を増やす選択である場合、それは会社にとっては本来的にポジティブであり重要なことなのです。
川崎 晴一郎
公認会計士・税理士
KMS経営会計事務所・株式会社KMS代表