相続をめぐって揉めない「ポイント」
【事情②:太郎さんが、亡くなるまで施設には入所せず、自宅で一夫さんに介護してもらっていた場合】
この介護をした分は、太郎さんの相続のときに何ら考慮されないのでしょうか。
民法では、「寄与分」という制度が定められており、介護をした分が「寄与分」として認められると、太郎さんの相続分を計算するときに、寄与分が反映されることになります。
【計算式】
例えば、寄与分が200万円として認められると、
4000万円―200万円(寄与分)=3800万円
3800万円×1/2=1900万円
一子さん:1900万円
一夫さん:1900万円+200万円=2100万円
一夫さんが自宅(3000万円)を相続すると法定相続分を900万円オーバーしますので、900万円を代償金として、一子さんに支払うことにより、双方が法定相続分を取得することとなります。
【寄与分とは】
相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がある場合に、他の相続人との間の実質的な公平を図るため、その寄与した相続人に対して、相続分以上の財産(寄与相当分)を取得させる制度です。
【寄与分の主な態様】
①労務提供型:被相続人の事業をほとんど報酬をもらわずに手伝ったなど
②財産給付型:被相続人の事業に資金援助したり、住宅購入資金を援助したなど
③療養看護型:被相続人の介護など
【寄与分の計算方法】
①:相続財産―寄与分=みなし相続財産
②:みなし相続財産×法定相続割合=各相続人の相続分
③:②で計算した相続分+寄与分=寄与分が認められた相続人の相続分
ポイント:法定相続人には、民法で扶養義務(民法877条)が認められているため、扶養義務を超える程度の介護等を行わないと認められません。
ポイント:寄与分を主張する人は、自分が寄与をしたことを主張・立証しなければならないため、他の相続人が認めない場合は、客観的な資料等が必要となります。
特別受益や寄与分については、主張し合うと遺産分割の手続が長引き、争いに発展しやすいです。そのため、生前に、遺産の分け方を決めて、特別受益や寄与分の主張などが出ないようにしておくことが、揉めないポイントとなります。
松村 茉里
アオ法律事務所 代表弁護士