(※画像はイメージです/PIXTA)

筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきかを記しています。発達障がいは治療ができない難病ではありません。本記事では、「5歳児健診」について解説していきます。

行える医師がほとんどいない「5歳児健診」とは

私が今、普及に努めているのが、5歳児健診です。日本では一般的に、3歳児健診が終わると就学時健診まで集団健診はありません。

 

5歳児健診はその空白の期間を埋める健診です。鳥取県で1996年に始めてから瞬(またた)く間に全国に広まっていきましたが、残念ながらすべての市町村でできるわけではありません。行える医師がほとんどいないからです。また、やろうとする自治体も予算の都合でできないのです。

 

5歳児健診の目的は3つあります。1つは、学齢期前のお子さんの成長発達を確認するとともに、睡眠・食事・生活リズムなどの基本的な生活習慣を見直し、お子さんを取り巻く環境を整え、より生き生きとした健康的な生活が送れるように支援することです。

 

2つ目は、集団生活に入ってから見られる、お子さんの成長発達のつまずきや子育ての困難さなどについて尋ね、適切な支援を行うことです。

 

3つ目は、健診を通して、保育園・幼稚園・医療機関・相談機関などとの連携を深め、より良い子育てネットワークを構築することです。

 

とにかく実行してみようということで、私が茨城県行方市の病院にいた2006年に、市の保健師さんたちの協力のもと、県内初の5歳児(幼稚園や保育園では年中にあたります)健診を始めました。白衣と聴診器のない画期的な幼児健診です。

 

また、ミュージック・ケア(※音楽に合わせて集団で体を動かす音楽療法)を同時に行い、集団の場において子どもたちがどういう行動をするのかを観察する機会も、初めて設けました。その間、親たちは別室で保健師による子育て支援講座を受講したり、お子さんのやっているミュージック・ケアを見学したりしています。

 

健診には、保育園や幼稚園に出向いて行う訪問型も考えられましたが、悉皆(しつかい)型(5歳のお子さん全員に葉書を出して、健診に来てもらうやり方)を選択し、保健センターに親子を集めて行いました。それには理由がありました。

 

人口3万人の町なので、5歳児が300人程度しかいません。

 

毎月、誕生月のお子さんを集めて健診をするので1年かければ私一人でも健診ができること、そして何よりも親御さんに直接指導できるからです。

 

訪問型では、問題行動があっても親御さんから許可の得られたお子さんしか健診できません。悉皆型だと、発達障がいかどうかボーダーラインのお子さんも含めて5歳児全員の相談に乗れますし、親御さんもちょっとした不安を相談しやすいというメリットがあります。

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

新訂版 発達障がいに困っている人びと

新訂版 発達障がいに困っている人びと

鈴木 直光

幻冬舎メディアコンサルティング

発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために 書版が出版されてから4年、時代の変化を踏まえて最新の研究データを盛り込み、大幅な加筆修正を加え待望の文庫化。 “「発達障がい」は治療ができない…

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