危機的状況「日本のものづくり」を変える唯一の方法
沖縄科学技術大学院大学(OIST)をご存じであろうか。
2019年6月、OISTの実力を世界に知らしめた出来事があった。科学誌「ネイチャー」が「質の高い論文ランキング」を発表、OISTが世界9位に入ったのだ(同ランキングにおける東京大学の順位は40位)。
OISTは沖縄県に本部を置く5年一貫制の博士課程を有する大学院大学である。今から約20年以上前に、科学技術政策・沖縄及び北方対策担当相を務めていた尾身幸次氏が沖縄振興に向けて世界トップクラスの科学技術拠点を沖縄に設けることを提案、故有馬朗人氏などの協力を得て設立した。
予算のほぼ全額を政府からの補助金に拠って、神経科学・数学・計算科学・化学・分子・細胞・発生生物学・環境・生態学・物理学・海洋科学など、現在81の研究ユニットが発足している。半分以上を海外の有能人材を招聘、元マックス・プランク学術振興協会会長のピーター・グルース氏が学長である。
この事例のように、日本の大学を今から改革している時間的余裕があるだろうか?
今こそ、海外からの有能な人材により、日本を変えて行く以外に方法は無い。日本では、エンジニアに対して、自ら新しいものを作り出すことよりも「決められた通りに仕事をこなしてくれればいい」という意識が根強くある。
一方、大田区にあるものづくりメーカーの社長さんは、異口同音に「アジア諸国の若い世代の多くはハングリー精神が旺盛で、日本人に比べ、必死さや貪欲さがある」と言う。
欧米などの先進国出身の場合も、わざわざ日本で働くという選択肢を選んだからには、何らかの明確な意図・意識で業務に臨む姿勢を持っている。一般に外国人技術者は意欲的であり、仕事への理解が早く、すぐに戦力になるとの評判が高い。
長年の内向きの日本人気質を、日本人同士で自ら変えるのは難しい。そこで、その起爆薬・呼び水として「自己主張」できる外国の優秀な若者を、厚遇を前提として積極的に日本に招き入れる。
海外の優秀な若者と一緒になって、講義や質疑応答する経験が早道で一番効果がある。彼らを好待遇で招き、日本人の気質を変えるよう期待したい。
2019年秋のラグビーワールドカップの日本代表は、31人中15人が外国出身であったことを思い起こしてほしい。