東南アジアのなかでも経済成長が著しいマレーシアは、世界の不動産投資家から注目されている国です。人口も増加傾向にあることから、今後も経済成長は続くでしょう。
本記事では、マレーシア不動産の利回りや価格推移など現在の動向、法規制や税金事情等について解説します。失敗しないために注意すべきポイントも紹介しますので、参考にしてください。
1. マレーシア不動産投資の動向は?価格推移や経済成長から考える
まずは、マレーシア不動産の現在の動向や価格推移、コロナ禍による影響などを交えながら、マレーシア不動産投資について解説します。
1.1. 不動産の価格推移はコロナ禍を受けて下落に転じた
マレーシア統計局のデータによるとマレーシアの住宅価格の中央値は2012年から2013年にかけて大幅に上昇しています。
その後は2017年まで緩やかに上昇しましたが、2020年に減少しました。これは新型コロナウイルス感染症拡大による影響と、政府による低所得者を対象とした住宅取得支援政策によるものだと考えられます。
州別の住宅価格の中央値を見ると、ジョホール州の住宅価格の中央値(2020年:35万リンギット)は2018年以降横ばいで推移していますが、首都・クアラルンプールは下降傾向にあります。しかし、元々中央値が高かったため、依然として他のエリアよりも高い状況(2020年:47万リンギット)には変わりありません。
1.2. 賃貸需要に重要な人口増加率が高い
現在日本では人口は減少傾向にありますが、マレーシアでは今後も人口増加が予想されます。
人口増加は賃貸需要の増加に直結するので、不動産投資をするうえでは大切なポイントです。また、住宅需要が高まるにつれて、住宅価格も向上します。賃貸収入であるインカムゲインだけでなく、値上がり益であるキャピタルゲインも期待できます。
1.3. 高い経済成長率を維持している
2022年第2四半期のデータを参考にすると、マレーシアの実質GDP成長率は前年同期比8.9%です。市場の予想を上回る高いGDPであることがわかります。
世界的にも経済が落ち込んだ新型コロナウイルス感染症拡大の時期は、マレーシアでもマイナス成長となっています。しかし、そのあと順調に回復しています。経済成長を続けるマレーシアでは、今後も安定した成長が期待できるでしょう。
2. 事前に把握したい、マレーシア不動産投資の規制や税金事情
マレーシアでは外国人不動産投資家に対する規制やルールがあり、税金に関しても注意が必要です。
外国人が不動産を購入する場合には州政府による許可が必要です。また、最低購入価格が決められており、売却時には税金がかかります。3つのポイントについて詳しく解説します。
2.1. 購入できる不動産の「最低購入価格」に規制がある
マレーシアでは外国人が購入できる不動産価格について、規制があるので注意が必要です。外国人が購入できるのは、基本的に100万リンギット以上の物件に限定されています。ちなみに日本円に換算すると100万リンギットは3,110万円です(1リンギット=31.10円換算)。ある程度の資金が必要なことがわかります。
長期滞在ビザを持っている人や、州によっては50万リンギット以上としている場合もあります。詳細については現地のエージェントに確認しましょう。
2.2. 外国人は不動産購入時に州政府に申請・許可の必要がある
マレーシアでは最低購入価格を上回っていたとしても、外国人が不動産を購入する際には州政府の許可が必要となります。
流れとしてはまず、審査を受けることになります。一般的に審査が通らないことはまずありませんが、審査自体に非常に時間がかかるため注意が必要です。
たとえばコンドミニアムなど完成しているのにもかかわらず、審査に時間がかかり許可が出ない場合、引き渡しを受けられないことになります。審査から許可までにかかる日数と、引き渡しの時期を考慮する必要があります。
2.3. 売却時に「キャピタルゲイン税」がかかる
マレーシアで不動産を売却する場合、売却益に対して「キャピタルゲイン税」ともいえる税金がかかります。マレーシアでは不動産譲渡益税(RPGT)と呼ばれています。
税率は所有期間によって異なり、物件取得から5年目までは売却益の30%、6年目以降は10%の税率がかかります。外国人はマレーシア人よりも高い税率なので、売却の際はなるべく6年目以降に売却することをおすすめします。
売却益を何かの資金に充てようと計画している場合には、この税金によって目減りするので税率に関しては事前に確認しましょう。
3. マレーシア不動産投資の利回りは?アジア各国と比較
海外不動産ガイドGlobalPropertyGuideのデータによると、マレーシアの不動産の平均利回りは3.72%です(2022年9月時点)。日本は2.66%、中国は2.1%、香港は2.35%となっています。先進国といわれる国より比較的高い状況です。
一方で、新興国といわれるインドネシア(7.07%)やカンボジア(5.33%)と比較すると低くなっています。アジアのなかでは「中間層」といえます。選ぶ不動産やエリアなどによって利回りは異なりますが、購入できる物件の条件や経済成長などを加味して不動産投資先を選ぶ必要があるでしょう。
4. マレーシア不動産投資の対象不動産は主に3種類に分かれる
マレーシアでは規制があるものの外国人も土地の所有ができるため、対象不動産にはバリエーションがあります。
コンドミニアムやアパートメントだけでなく、戸建ても対象として検討できます。それぞれの特徴を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
4.1. コンドミニアム
コンドミニアムとは、日本でいうタワーマンションなど、大規模なマンションを指します。プールやシアタールーム、ジムなど充実した共用施設が魅力で、コンシェルジュサービスも備えていることが多いです。
スーパーやコンビニ、レストランが併設されていることが多く、住環境としての利便性に優れています。価格は高額になりますが、富裕層に人気があるタイプといえます。
新築を購入する場合は完成する前の「プレビルド」の状態で購入することが一般的なので、少なからず竣工リスクがあることを考慮しましょう。
4.2. 戸建て
マレーシアで一般的な住宅は戸建てタイプで、リンクハウスといわれる長屋形式の住宅です。10戸以上が連なっている形式で、イギリス統治下に広まったヨーロッパの住宅様式といわれています。
戸建て物件のなかでも庭にゆとりがあり、ハイクラスなものを「バンガローハウス」といいます。日本でいう一戸建てを指します。建物の前後左右に庭があり、富裕層に人気があるタイプです。
他にもタウンハウスのような「セミデタッチ」や、リンクハウスの端の住戸を「コーナーハウス」と呼ぶなど、戸建て住宅にも種類があります。
4.3. アパートメント
日本でイメージするアパートとは異なり、マレーシアのアパートメントは中小規模のマンションやアパートを指します。コンドミニアムにあるような共有施設はないことが多く、あったとしても少ないのが現状です。
物件によって異なりますが、スーパーやコンビニなどが併設されているケースは少ないといえます。コンドミニアムよりも賃料が安いため、中級クラスに人気があるタイプです。
5. マレーシア不動産投資に取り組むメリットを解説
マレーシア不動産投資をするメリットはいくつかあります。ここでは5つのメリットについて以下の通り解説します。
- 日本人でも所有権を取得できる
- 不動産価格が比較的安価である
- キャピタルゲインが期待できる
- 安定した住宅需要を見込める
- 自然災害が起きにくい
5.1. 日本人でも所有権を取得できる
マレーシアでは、外国人も土地の購入が可能です。土地付きのコンドミニアムや一戸建てを所有することができます。同じ東南アジアでもベトナムやフィリピンでは外国人は土地の所有が認められていないため、土地を所有したい人にはマレーシアがおすすめです。
土地の権利には、フリーホールド(自由保有権・Freehold)とリースホールド(借地権・Leasehold)があります。比率はリースホールドが6割を占めています。リースホールドの期間は政府により定められているので、詳細はエージェントに確認してください。
5.2. 不動産価格が比較的安価である
海外不動産ガイド「GlobalPropertyGuide」のアジア各国における1平方メートルあたりのコンドミニアム価格比較によると、マレーシアは38万8,000円で日本の1/6程度と比較的安価です。
カンボジアは32万9,000円、インドネシアは32万6,000円とそれほど変わらない価格帯であり、マレーシアの経済状況から考えても比較的安価であるといえます。
5.3. キャピタルゲインを期待できる
キャピタルゲインが期待できるかどうかは、色々な条件が備わる必要があります。大きなポイントとしては人口が増加傾向であり、安定した経済成長が期待できることでしょう。
マレーシアの2015年から2020年の平均人口増加率は+1.3%ほどで、安定して+1%を超えています。先進国で+1%を超える国はオーストラリアのみです。
経済成長率は、外務省の基礎データによると、2020年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により-5.6%と落ち込みました。しかし、それ以前は+5%前後を推移しており、キャピタルゲインが期待できる状況といえます。
5.4. 安定した住宅需要を見込める
マレーシアの人口分布の特徴として、30~34歳の若い世代が多いことが挙げられます。人口全体に対して若い労働力が多いことから、今後も経済成長・発展が促進されることが期待できます。
いわゆる「ボーナス期」が2040年ごろまで続くと見込まれています。年齢中央値が若いこと、経済成長も期待できることから、住宅需要の増大を期待できる状況といえます。
6. マレーシア不動産投資に失敗しないための注意点
メリットについて紹介しましたが、もちろんリスクもあります。ここからはマレーシア不動産投資に失敗しないための注意すべき点を紹介します。
- 工事中断で物件が完成しない「竣工リスク」が生じ得る
- エリアによって「空室リスク」が高くなる
- 物件のクオリティが低いことがある
- 供給過多になっているエリアは売却しにくい
- 登記済証の発行に時間がかかる
6.1. 工事中断で物件が完成しない「竣工リスク」が生じ得る
マレーシアに限ったことではありませんが東南アジアでは多くの場合、建物が完成する前の状態で購入することになります。いわゆる「プレビルド」です。
完成までに物件価格が値上がりすれば、結果的に物件を安く購入できることになりますが、物件が完成しないリスク(竣工リスク)があります。その場合、手付金や中間金は返金されません。
完成した場合でも予定より数年遅れるケースもあることから、デベロッパー選びが重要といえます。リスクをゼロにすることはできませんが、大手もしくは日系のデベロッパーが開発する物件を選ぶことで、竣工リスクを軽減することができます。
6.2. エリアによって「空室リスク」が高くなる
不動産投資全般にいえることですが、エリアの選定は重要です。人気のあるクアラルンプールであっても立地によっては入居者を得ることが難しいケースもあります。
交通の利便性や商業施設までの距離、学校や病院への位置関係などにより人気が大きく異なることがあるので、現地エージェントに相談することをおすすめします。
6.3. 物件のクオリティが低いことがある
日本の新築物件であれば、通常そのまま賃貸物件として貸し出すことができますが、東南アジアの国々では新築物件といえどもすぐに貸し出すことができる状態ではないことがほとんどです。
通常、完成後にチェックを行い、手直し工事などをすることになります。その工事もやり取りに時間がかかるでしょう。完成後すぐに募集・賃貸できるとは限りませんので、資金計画などに余裕を持つ必要があります。
6.4. 供給過多になっているエリアは売却しにくい
マレーシアでもクアラルンプールは非常に人気があるエリアです。そのため物件の供給が過剰になっている地域もあり、売却したくても思うような金額での売却が望めないケースがあります。
ある程度売却価格を譲歩しても、買い手が現れないこともあるので注意が必要です。購入する際に、供給過多になっていないかという視点で物件を見ることも必要でしょう。
6.5. 登記済証の発行に時間がかかる
マレーシアでは登記済証の発行までに数ヵ月かかることが多く、1年以上となることも珍しくありません。登記済証が発行される前に転売することはまず難しいでしょう。
日本の金融機関でローンを組む場合には、特に注意が必要です。借り入れた融資を利用したことの証明として、登記済証の提示を求められることがあります。事前にその旨を相談しておく必要があります。
7. マレーシア不動産投資が向いているのはこんな人!
マレーシアは2017年までの12年間連続で「海外で日本人が住みたい国」の第1位となっています。将来的にマレーシアに移住したいと考えている人が、自分が住むために購入するのが一番向いているといえます。実際に移住したときに転売して、その資金で自宅を購入するのもよいでしょう。
マレーシアの不動産価格は、数年で数倍という大きなキャピタルゲインは狙えない市場だと考えられます。ある程度の売却益は欲しいけれど、国内政治や経済が安定している国で不動産投資をしたいと考えている人に向いているでしょう。
8. まとめ
マレーシアは東南アジアのなかでも比較的政治と治安が安定しており、物価も安いのが魅力です。不動産価格も比較的安く、今後も上昇傾向にあるので、キャピタルゲインもある程度望めます。
人気があるクアラルンプールでも、エリアによっては空室リスクがあります。エリアの特性やターゲット層などについては、現地エージェントに相談することをおすすめします。