中国経済の失速リスクに注目
中国の経済が失速する可能性が指摘されています。筆者は中国経済に詳しいわけではありませんが、それでも心配なものは心配です。筆者が注目しているのは、
不動産バブルの崩壊
ゼロコロナ政策によるロックダウン
「共同富裕」政策によるビジネスのシュリンク
の、3点です。
不動産バブルの崩壊については、10年以上前から懸念する人がいましたが、いよいよ本当に崩壊しはじめたのかもしれません。不動産バブル崩壊が金融危機をもたらすか否かは何ともいえませんが、建設業は中国の主要産業なので、住宅建設が止まってしまうだけでも景気への悪影響は大きなものがありそうです。ちなみに金融危機の可能性については、前回の拙稿『2022年、日本経済のゆくえ…注目は「中国経済の失速リスク」』をご参照いただければ幸いです。
ゼロコロナ政策に伴う大都市のロックダウンは、すでに経済に大きな悪影響をもたらしていますが、今後も新型コロナが感染力を強めていくと、ロックダウンの対象地域が拡大してしまう可能性も否定できません。
新型コロナは変異しており、最近主流のものは感染力こそ強いけれども重症化率や死亡率は低いので、そこまで徹底的に対策する必要はないようにも思われますが、中国共産党は新型コロナの初期に徹底した封じ込めで成功した体験を持っているだけに、政策の変更は難しいのかもしれません。
「共同富裕」政策も気になります。表面的には皆で豊かになろう、という政策なのですが、ある時突然「お前の会社は貧富の格差を拡大しているから中国共産党の安定的支配に有害であり、排除する」というようなことが行われかねないようです。そうなると企業家は、常に「いつ中国共産党の怒りを買って排除されてしまうかわからない」という不安を感じることになり、ビジネスがシュリンクしかねません。
中国経済の失速が、世界の景気を「下押し」
上記のような要因により、中国経済が失速する可能性が指摘されるわけですが、中国経済は巨額の輸入をしているため、世界各国の対中国輸出の落ち込みによって、世界経済が不況に陥る可能性もあるでしょう。
もしかすると、中国製の部品の生産や物流が滞り、世界中の工場が部品不足から生産不能に陥る可能性もあるでしょう。そうなると、各社は工場労働者を解雇するでしょうから、失業が増えて不況になり、同時に生産減により需給関係が崩れてインフレになるかもしれません。リスクシナリオとしてのスタグフレーションですね。
不幸中の幸いとしては、仮に中国で金融危機が発生したとしても、人民元はローカル通貨なので、影響は概ね中国国内に止まるだろう、ということです。米国のリーマン・ショックが基軸通貨の信用収縮を通じて世界経済に深刻な悪影響を及ぼしたようなことは、中国の金融危機によっては起きないでしょう。