フィリピンは海外投資先として魅力のある国の一つです。安定した経済成長や人口増加などのメリットが考えられますが、一方で気をつけなければならないポイントがあるのも確かです。
この記事ではフィリピン不動産投資の魅力と、注意点について解説します。実際の不動産投資の始め方もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1. 知っておきたいフィリピンの基礎知識
フィリピンの正式な国名はフィリピン共和国。国土は日本の8割程度の広さで、7,600を超える島々からなる西大西洋に位置する東南アジアの国です。
首都はマニラ、人口は1億903万5,343人、首都圏の人口は約1,348万人です。
公用語はフィリピノ語、もしくは英語です。ほかにも180以上の言語があるそうですが、国民の90%以上の人が英語を話せるといわれており、英語はほぼ問題なく通じます。おそらく戦時中から戦後まで、アメリカの植民地だったことが大きく影響しています。
民族はおもにマレー系ですが、ほかに中国系やスペイン系と少数民族がいます。宗教はASEANで唯一のキリスト教国で、国民の83%がカトリックといわれています。
引用元:フィリピン基礎データ|外務省
2. フィリピン不動産投資が注目される理由
フィリピンは世界的に見ても将来性が高く、不動産投資を検討するメリットがそろった国のひとつです。本項ではまず代表的な5つのメリットについてご紹介します。
2.1. 安定した経済成長で今後も物件価格上昇が期待できる
不動産投資をするうえで重要なポイントは、経済の安定と成長だといえます。
新型コロナウイルス感染症の拡大により経済活動が抑制された2020年はフィリピンの経済も停滞し、実質経済成長率はマイナス9.5%でした。しかし翌年2021年には好転し、5.7%となりました。ここ10年を見ても6%前後という世界的にも高い水準で推移しています。
経済の安定的な成長から国民の所得は向上し、不動産の購買意欲も高まっています。またGDPの6割を占めるBPO産業(コールセンターなど業務の外部委託)を含むサービス業が好調で、外資系企業の進出が相次いでいることも要因となり、今後も物件価格の上昇が期待できます。
引用元:フィリピン基礎データ|外務省
2.2. 人口が増加しており需要が拡大する見通しがある
フィリピン国勢調査によると人口は1億903万5,343人(2020年度の調査)、少子化である日本とは異なり現在も右肩上がりで人口が増加しています。
現在のフィリピンの人口分布は、若年層になるほど人口が多い理想的なピラミッド型になっています。いわゆる「人口ボーナス期」です。人口に対して労働力が豊富なことから、経済成長が促進されることが期待できるといわれています。国連はフィリピンの現在の人口分布は2050年ごろまで続くと予測しています。
人口増加は不動産需要に直結します。経済成長との相乗効果で今後も不動産需要は拡大する見通しです。
2.3. 物件価格が比較的安価である
フィリピンの通貨は「ペソ」で、現在のレートは1PHP(フィリピン・ペソ)≒2.46円(2022年9月30日時点)です。物価は日本の1/2から1/3ともいわれています。
フィリピンは経済成長の著しい国ではありますが、マンション価格は日本と比べてまだまだ安く、平米単価は東京のマンションの1/4程度ともいわれています。フィリピンでは高級コンドミニアムが東京の高級マンションと比べ手ごろな価格で購入できるため、分散して投資をする場合の候補として検討しやすい国といえます。
2.4. 外国人駐在員の増加と入居に期待できる
前述の通りGDPの6割を占めるBPO産業などのサービス業が好調で、コールセンターにとどまらず、IT分野の開発業務やバックオフィス業務などが拡大をみせています。今後も欧米諸国の企業から派遣される外国人駐在員が増えることが期待できます。
家賃補助がある外国人駐在員は高額であっても、質のよいコンドミニアムを希望する傾向にあります。滞納リスクが少ない外国人駐在員をターゲットにできるよう、優良物件を所有することがポイントです。
2.5. 期待利回りが高い
期待利回りは、1年間の想定家賃収入÷不動産価格×100で求めます。フィリピンのコンドミニアムの期待利回りは平均で6.13%、なかには9%という物件もあり、アジアのなかでも利回りが高いといわれています。
東京都内の人気エリアでも利回りは4%~4.3%程度です。物件価格が安くて利回りがよいフィリピン不動産への投資は、はじめて海外不動産へ投資する方にとって手を出しやすい物件だといえます。
3. フィリピン不動産の外国人規制について把握しておこう
ここまでフィリピン不動産投資には多くのメリットがあることについて解説してきましたが、外国人規制があることについてはしっかり把握しておく必要があります。2つのポイントに絞ってご紹介します。
3.1.【土地】外国人による所有は認められない
フィリピンでは、外国人が土地を所有することは認められていません。土地の所有が認められているのはフィリピン国籍を持った人、もしくは全体の60%以上がフィリピン資本である企業です。
フィリピン人の名義を借りるなどして、実態のない法人を作ることは処罰対象になります。土地の所有はできないと考えたほうがよいでしょう。
3.2.【建物】外国人であっても所有や賃貸が可能
外国人は土地の所有ができないのであれば、集合住宅も所有できないと考える方が多いかもしれません。フィリピンでは、コンドミニアムは土地の保有権を登記しないため外国人であっても所有や賃貸が可能です。
したがって日本人がフィリピンで不動産投資を行うのであれば、必然的にコンドミニアムになります。
しかし、その集合住宅であっても、外国人が所有できるのは1棟ごとに全体の40%未満となっており、外国人の専有割合に制限があるため、注意する必要があります。
コンドミニアムとその下の土地は別の不動産として扱われますが、フィリピンではトレンズ・システムという登記制度が確立されており、コンドミニアムも登記することができます。登記が行われた場合には、コンドミニアム権利証が発行されますので安心です。
4. フィリピン不動産投資のやり方・始め方5ステップ
ここからは実際のフィリピン不動産投資のやり方・始め方をご紹介します。外国人には規制があり難しいと思われがちですが、5ステップでわかりやすく説明します。ぜひ参考にしてください。
ステップ①:不動産投資の目的を設定する
不動産投資と一言でいっても目的はさまざまです。家賃収入を得るための投資、売却益を想定した投資、相続税対策や最終的には移住を検討しているなど、目的によって不動産投資の進め方が異なってきます。
また、何を重視するかによって物件の選び方も変わってきます。まずは目的を明確に定めましょう。
ステップ②:投資エリアを決める
エリアの選定はフィリピン不動産投資をするうえで重要なポイントとなります。必ず現地エージェントにエリアの特徴を聞き取りし、投資目的に合った条件なのかを確認しましょう。代表的な候補エリアは以下の通りです。
「フィリピンのウォール街」ともいわれているマカティ市は高層ビルが建ち並ぶ近代的なイメージの街です。ショッピングモールの周辺には高級住宅街が広がっています。利回りを考えると魅力的なエリアだといえます。
将来移住を考えている方には、比較的落ち着いた環境のダバオがおすすめです。フィリピン南部のミンダナオ島の港がある街で、日系人が多く集まるエリアのため、日本人の移住先として人気があります。
ステップ③:不動産売買契約を結ぶ
候補となる物件が決まったら売買契約を締結します。フィリピンの不動産売買契約書は、基本的に全文英語で書かれています。英語で日常会話ができる方でも契約書の内容については難しい部分もありますので、必要に応じて日本人スタッフが在籍するエージェントを選ぶと安心です。
不動産売買契約書にはキャンセル時や万が一の状況になったときのルールなどが記載されていますので、少しでも不安や疑問を感じたら現地エージェントに相談しましょう。
ステップ④:購入資金をフィリピンへ送金する
購入資金を海外送金することはできますが、着金までに最低でも1日以上かかります。また現地の管理会社への支払いや必要経費などその都度送金すると手数料もかかりますので、基本的には現地の金融機関に口座を開設しておくことをおすすめします。
海外送金する場合は金融機関のミスによる遅延が発生する可能性に備え、送金票の控えを保管しておきましょう。
ステップ⑤:不動産を管理する会社を選定する
海外で不動産投資をする場合、不動産を管理する会社の選定は重要です。管理会社には不動産のあっせんから不動産の管理業務まで行う会社や、管理業務を専門に行う会社があります。
ご自身の状況に応じて、管理会社を選ぶことをおすすめします。
フィリピンと日本の時差は1時間ほどですが、現地エージェントと連絡をスムーズにとるためにも日本語がわかる担当者、または日本人スタッフが対応してくれる管理会社が安心です。管理会社が対応できるサービスの内容もきちんと比較して選定するようにしましょう。
5. フィリピン不動産投資に失敗しないための注意点
フィリピンは今後も人口は増加傾向が続き、経済成長に伴って不動産価格の上昇も期待できるでしょう。だからといって、不動産投資がすべて上手くいくわけではありません。注意すべきポイントを4つご紹介します。
5.1. プレビルド物件はプロジェクトの売れ行きを確認する
フィリピンで不動産投資をする場合、前述の通り外国人は土地を所有することができないため、建物のみの所有権を購入するコンドミニアムがターゲットになります。加えて中古物件を手にすることは難しく、外国人が購入できるのは新築のコンドミニアムであることがほとんどです。
プレビルド(未完成)の物件を契約する場合には、竣工リスクが伴いますので注意が必要です。自転車操業的に資金を工事費用にあてて建築する売主も存在し、資金が集まらない場合には工事が中断するケースもあります。売主の実績や売れ行き状況など、経営状況を確認する必要があります。
5.2. ディベロッパー選びは慎重に行う
竣工したコンドミニアムが完成しても安心はできません。なかには工事が粗雑でそのままでは賃貸に出せない物件や、物件価格に対しての利回りをよく見せるために家賃の設定が相場よりも高く設定されているケースがあります。
空室のリスクを減らすためにもディベロッパーの実績や評判などの情報から、信頼できるかどうかを見極める必要があります。
5.3. 家賃相場のリサーチはきちんと行う
家賃相場のリサーチは非常に重要です。必ず周辺相場を確認し、設定家賃が適正であるか根拠も求めて確認をしましょう。
また、比較している物件と比べて嫌悪施設やマイナスとなるような条件がないか、現地でご自身の目で確認するようにしましょう。プロでなくても実際に見ることによって、ある程度家賃の妥当性を確認することができます。
5.4. 外国人に対する急な制度変更に備える
新興国では特に、外国人に対する制度が変更になることがあります。実際に他国では外国人に対して規制が厳しくなったケースがありました。
外国人に対する制度の変更や制限は予測することができません。不動産投資全般においていえることですが、不動産を分散して所有することをおすすめします。
6. 法改正で実現した「小口化商品」とは何か?
不動産投資というと高額なイメージがありますが、法律が改正されたことにより海外不動産も小口化商品の対象になりました。まずは海外不動産投資を小額で始めてみたいという方におすすめです。
ただし、特例事業の要件は必須です。
6.1. 小口化商品とは少額から手間なく購入が可能な不動産投資商品のこと
小口化商品とは、数万円から購入できる不動産投資商品のことです。どこの不動産会社からでも購入できるわけではなく、不動産特定共同事業法の承認を受けている不動産会社に限られます。
この商品のメリットは不動産投資を小額から始められることと、単独では購入できない高額物件に少額から投資できる点です。
6.2. 小口化商品とリートでは販売元に大きな違いがある
小口化商品に似た不動産投資としてリートがありますが、どのように違うのでしょうか。
まず管轄が異なります。リートは金融庁、小口化商品は国土交通省の管轄です。また、リートは証券会社を通じて購入しますが、小口化商品は不動産会社が販売元です。
商品としては、リートはレジデンスやショッピングモール、リゾートホテルなどが対象です。一方で小口化商品はレジデンスやシェアハウスなどが投資商品になります。
6.3. 小口化商品が向いているのはこんな人
前述の通り小口化商品は小額から投資することができるため、海外不動産を購入するのはハードルが高いけれど小額であれば始めてみたい人に向いています。また、リスクヘッジのために資産を分散したい人にもおすすめです。
不動産投資は契約締結や建物の管理などやるべきことが多く手間もかかりますが、小口化商品はほとんど手間がかからないので、手軽に始めたい人にも向いています。
7. まとめ
東南アジアのなかでも経済成長が著しいフィリピンは、海外不動産投資先としておすすめの国のひとつです。一方で外国人は土地の所有ができないことや、新築のコンドミニアムであれば竣工リスクなど注意すべきポイントがあるのも事実です。
フィリピンは諸外国に比べ物件価格はまだ安い部類ですが、まずは小額で小口化商品から投資を始めてみるのもよいでしょう。信頼できるエージェントを見つけ、情報収集から行うことをおすすめします。