ベトナムはかつてフランスの支配下にあった時期があり、今でもフランスの影響を受けたコロニアル調の建物が街にあふれています。一方で、寺院や瓦屋根の建物は中国文化の影響を感じ、エキゾチックな街並みが大きな魅力です。
ASEANのなかでも経済の成長が著しいベトナムは、人口増加も顕著であり、不動産投資先として魅力がある国のひとつです。本記事ではメリットやリスクはもちろん、気になる利回りや、物件価格の推移を紹介します。失敗しないための注意点も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1. ベトナム不動産投資にバブル到来?価格推移とその背景
ベトナムは世界でも珍しい社会主義国家です。2015年7月の住宅法改正により、それまで禁止されていた外国人による不動産投資が解禁になりました。
所有権や戸数(集合住宅であれば1棟当たり30%までなど)には制限がありますが、外国人の不動産投資を解禁したことがベトナム不動産の価格上昇に拍車をかけました。本項では価格の推移とその背景について解説します。
1.1. ベトナムの不動産価格は上昇を続ける
前述の通り2015年以前、ベトナムの不動産市場は外国人の投資家に対して閉ざされた市場でした。しかし、条件付きではあるものの外国人にも不動産の所有と運用が認められたため、一気に注目を浴び不動産価格は年々上昇を続けています。1年で4倍以上に値上がりしたエリアもあり、バブルともいわれています。
世界的にみてまだまだ不動産価格の割安感があることから、今後も人気が衰えることはないでしょう。
イギリスの不動産会社である「Savills plc」によると、2021年のベトナムの住宅販売数は減少しています。たとえばホーチミンでは、2021年の第二四半期の別荘とタウンハウスの売上高は前年同期比で33%減少しました。
今後も急激に供給が増加するとは期待できないことから、この傾向は続くことが予想されます。ベトナムの富裕層は、金利8%の銀行に預けるよりも不動産投資をしたほうが得と考える人が多く、国内外の人気から今後も不動産価格は上昇を続けるでしょう。
1.2. 不動産の価格上昇には背景には進行している都市化がある
世界的にいえることですが、ベトナムにおいても都市化が顕著です。経済産業省が公表している「医療国際展開カントリーレポート」によると、ベトナムでは2045年に都市部と農村部の人口が逆転すると予測しています。今後も都市化がより進んでいくでしょう。
都市部の人口増加により、海外のみならず国内の不動産需要も高まりをみせるでしょう。既存の都市部では収まり切らなかった需要が近隣エリアまで進出し、都市部が拡大することも予想されます。人口増加と都市部の拡大により、不動産の価格は今後も上昇傾向が続くと考えられます。
1.3. 一方で不動産市場を不安視する声も
前述の通り不動産の供給不足が影響し、不動産価格が上昇傾向にあります。今後も価格が高騰し続ければ、都市部に住みたくても住めない市民の購買意欲を低下させることになります。流通市場の動きが鈍化すれば、結果として富裕層をターゲットにした不動産開発にも影響が及ぶ可能性が考えられます。
このまま急激な不動産価格の上昇が続けば、バブルのような事態を招くかもしれません。現時点では判断が難しいのですが、注視する必要があります。
2. ベトナム不動産投資の気になる利回りは?
海外不動産ガイドであるGlobal Property Guideが公表した「アジアと比較したベトナムの賃貸利回り」は4.33%です。日本と比べると高いことがわかります。
しかし、ベトナムは立地や物件の質によって幅があります。ハノイでは地区により違いはあるものの賃貸利回りは4~7%となっており、全体の平均値を上げています。ベトナムの平均は3~5%と見たほうがよさそうです。
3. ベトナム不動産投資に取り組むメリットを解説
本項ではベトナム不動産投資の代表的な5つのメリットについて解説します。
- 大きく経済成長を続けている
- 人口増加による利回りの増加が期待できる
- 自然災害のリスクが少ない
- 不動産価格が低い傾向にある
- 税金が低い(固定資産税がない)
3.1. 大きく経済成長を続けている
経済成長率を前年のGDP伸び率で算出すると、ベトナムの経済成長率は新型コロナウイルスの影響を受けた2020年と2021年に+2%台に落ち込みました。
しかし、それ以前は+7%前後で推移しており、過去にはASEANでトップクラスの成長率でした。今後も安定して経済成長を続けるといえます。
これはアジアの他の国々が減速傾向であるのに対し、ベトナムは特異な状況です。インフレ率は比較的低く抑えられており、経済がよい状態で成長していることがわかります。
3.2. 人口増加による利回りの増加が期待できる
ベトナムの人口は約9,762万人(2020年ベトナム統計総局による)、1人あたりのGDPは3,498米ドルです(2020年IMF推計値)。1970年の日本の高度経済成長期に非常に似ている状況といえます。
若い労働力が全人口の70%を占め、ボーナス期ともいわれる現在の状況は、経済成長に有利な状況です。ベトナムでは2060年まで人口増加が予測されます。今後も経済成長と人口増加が続けば、賃貸需要は高まり、利回りについても増加が期待できます。
3.3. 不動産価格が低い傾向にある
2022年5月に日本不動産研究所が公表した『第18回「国際不動産価格賃料指数」(2022年4月現在)の調査結果』によると、マンションや高級住宅(ハイエンドクラス)の価格水準は、東京都港区の高級住宅を100とすると、ホーチミンは11.9とかなり低い数値でした。
同じアジアのバンコクやクアラルンプールでも約25~27前後ですから、アジアのなかでも不動産価格が相対的に安いことがわかります。
3.4. 税金が低い
ベトナムは不動産投資を行ううえでの、税金に関する負担は少ないといえます。不動産投資をするうえでかかる税金は所得税や付加価値税、不動産登記税です。
不動産収入に対する譲渡益の25%、または取引額の2%の個人所得税がかかります。また、一般的に不動産購入代金の10%が付加価値税として課税されます。
日本でいう消費税のような税金で、不動産以外にも商品やサービスに対しても金額の10%が課税されます。不動産購入時の支払いにすでに含まれていますので、別途納める必要はありません。
不動産登記税は不動産を取得したときに課税される、日本でいう登録免許税のようなものです。一般に公表されている価額表に基づいてその0.5%が課税されます。
4. ベトナム不動産投資を失敗させない!注意すべきリスクとは
本項ではベトナム不動産投資で失敗しないために、注意しておきたい2つのリスクについて紹介します。
- 通貨を海外送金するための手続きが難しい
- 急な規制・制度変更の可能性がある
4.1. 通貨を海外送金するための手続きが難しい
ベトナムでは、日本のように海外送金はできないと思ったほうがよいでしょう。納税証明書や賃貸許可証など多くの必要書類を準備する必要があり、明確な送金理由を記入する必要があります。
大手銀行であれば比較的スムーズに送金できますが、それでも送金元と送金先の名義が異なる場合は、別途書類が必要になります。着金までに時間がかかる可能性もあるため、余裕をもった送金をするようにしましょう。
4.2. 急な規制・制度変更の可能性がある
ベトナムのような発展途上国では、外国人に対する規制や制度が急に変更される可能性があります。実際、外国人の投資目的での不動産所有が認められたのも2015年と歴史が浅く、今後も変更がないとはいい切れません。
不動産価格の上昇はベトナムに住む人たちにとってメリットだけではありません。今後の情勢によっては外国人に対する規制が厳しくなる可能性もあります。現地の事情に詳しいエージェントから常に情報を得られるようにしておきましょう。
5. ベトナム不動産投資を行う前に把握したい「規制」について
ベトナムでは外国人が不動産を所有することに対して規制が厳しいので注意が必要です。戸数や土地所有に対しての規制など数も多いのが特徴です。以下の通り詳しく説明します。
5.1. 外国人が不動産を購入する場合の「戸数規制」
外国人がコンドミニアムを所有する場合には、1棟につき全体の30%までという規制があります。
戸建住宅は1街区250戸と定められており、外国人所有が増えすぎないよう規制されています。すでに外国人が所有している数の確認についてはエージェントに確認しましょう。
5.2. 土地に対する「所有権の規制」
ベトナムは社会主義国であるため、土地は政府の土地という認識であり、ベトナム人であってもそれは変わりません。個人、法人でも同じです。ベトナムで土地を所有することはできません。
土地は所有するものではなく、使用権によって利用するものです。この点を理解していれば、問題ありません。土地使用権証書については「レッドブック」と呼ばれる、登記を証明する書類があります。
5.3. 不動産の所有・土地を使用する「期間の規制」
外国人が土地を使用する場合、認められている期間は最長で50年で、1回のみ更新が可能です。合計100年ということになりますが、外国人から購入する場合は前所有者の使用期間を引き継ぐことになります。
所有期間についてトラブルになることを避けるためにも、使用できる期間についてはエージェントに確認しましょう。
5.4. 法人か個人かによって変わる「賃貸運用の規制」
外国人でも投資目的で物件を購入して賃貸収入を得ることができますが、それは個人で購入した場合に限られます。法人名義で購入した場合は社宅に利用目的が限定されるので注意が必要です。
ベトナム国内で不動産事業免許を保有する法人は、賃貸目的で購入することができますが、資本金が1億円程度かかります。ベトナムで賃貸を目的として不動産を買う場合は、基本的に個人名義に限られると考えてください。
5.5. 中古マンションなどを購入できない「中古物件の規制」
外国人も不動産を所有できますが、これはデベロッパーによるプロジェクトによって新規に開発されたものが対象で、中古マンションは購入できません。
また、新築プロジェクトであっても富裕層や外国人をターゲットにした物件に限定されます。つまり、政府が外国人への販売を許可しているものに限られるということです。
現地中流階級をターゲットにした中級のマンションもありますが、このような物件は購入できません。
6. ベトナム不動産投資に注目される4つのエリア
最後に、ベトナムの不動産投資で注目されるエリアについてご紹介します。どのようなエリアに注目して不動産投資を検討すればいいのか、参考にしてください。
6.1. ハノイ
ハノイは政府機関や大使館などが集まる、ベトナムの首都です。ホーチミンに次ぐ大きな都市ですが、一方で自然に恵まれ観光地としても人気があります。エメラルドグリーンが美しい世界遺産のハロン湾まで車で3時間という立地です。
ショッピングモールなどで買い物が楽しめる「ホアンキエム区」や、日系企業が多く集まる「ベーディン区」、コンドミニアムの開発が進んでいる「コウザイ区」などがあります。駐在員をターゲットにするのであれば、ハノイがおすすめです。
6.2. ホーチミン
ベトナムのなかでも近代化が進み、高層ビルや商業施設が多く見られる街です。外資系企業が多く進出してきており、経済の中心地となっています。人口も増加傾向が顕著で、今後も都市化と共に人口が増えることが予想されます。
日本人に人気がある「1区」や、日本人学校が集まる「7区」、大型コンドミニアムの開発が進む「ビンタイン区」などがあります。
すでに地下鉄が整備されているエリアですが、加えて新しい路線が開通予定です。生活環境として利便性が高いことから、不動産投資におすすめの街といえます。
6.3. ダナン
ダナンはベトナムの中部に位置する、海に面した観光地として有名です。特にミーケビーチは米雑誌フォーブスにより、アジアの魅力的なビーチとして紹介されたこともあります。
近年では観光地としてだけでなく、ビジネスの街としても注目されています。ハノイやホーチミンに比べ認知度はまだ低いのですが、今後更なる発展が期待できる街です。
6.4. クイニョン
クイニョンは南中部に位置する中核といえる都市です。豊かな自然が残るエリアでチャンパ王国の遺跡があることから、ベトナム人の旅行先として人気があります。また、アメリカのニュースサイトが紹介したこともあり、近年は外国人観光客も増えました。
まだ認知度が低いことから、他のエリアに比べて価格が安いことが想定されます。クイニョンも候補としてご検討ください。
7. まとめ
ベトナムは外国人の不動産投資家に対して、数多くの規制があります。また、土地の所有ができないこともあり、不動産投資が難しいと思われがちです。しかし、不動産価格に割安感があり、今後経済成長が望めることから、海外不動産を検討する場合には、ぜひ考えていただきたい国のひとつです。
外国人が購入できる物件かは、現地エージェントに確認しましょう。注意すべきポイントを押さえたうえであれば、魅力的な投資先になるでしょう。