イーヤスは企業と提携して整体マッサージを行っている(施術中の写真)

企業が従業員の健康を気遣い、デジタルデバイスを利用して体調を管理させたり、手厚い福利厚生を設けたりする事例が相次いでいる。少子・高齢化を背景とした人手不足が深刻となっていることや新型コロナウイルスの感染拡大などが背景にある。国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)では、「すべての人に健康と福祉を(目標3)」、「働きがいも経済成長も(目標8)」を掲げている。企業は自社のブランディングの一環としても従業員の健康サポートを充実し、目標を達成しようとしている。この連載では、全国で法人向けの出張マッサージサービスを手掛ける株式会社イーヤス(名古屋市)の遠藤基平社長が、その経験をもとに「健康SDGs」を実践する企業を紹介し、その意義を具体的に解説する。

スマホやタブレットなどで「健康支援アプリ」を活用

生命保険大手のM社は、2019年から、AI管理栄養士が食事・運動などの毎日の生活をサポートする「健康支援アプリ・プログラム」を始めました。健康支援アプリは、スマホ・タブレット・パソコンなどから利用でき、動画やクイズなどで健康に関する知識を配信したり、生活習慣に関するアンケートをもとに健康行動を提案したりします。

 

企業側も利用状況データを確認できるので、企業健康度を随時把握することが可能です。同社ではプログラム導入後、従業員から「体重が減少した」「BMI値が改善した」といった声が多数あがっているそうです。 

 

ソフトウェア開発のA社が導入したのは、「睡眠動画コンテンツ・プログラム」です。このプログラムは、動画コンテンツなどを通じて、睡眠に関する基礎知識のほか、自分の仕事のタイプに応じた睡眠の質を高めることができます。同社によると任意でのプログラムへの参加にしたにもかかわらず、約60%の社員が視聴したそうです。

企業の「健康SDGs」の具体的な効用は

従業員の健康管理や健康づくりを目指す「健康SDGs」は、一定のコストはかかりますが、企業にとっても大きなメリットがあります。例えば「自社のイメージやブランド力が高まる」ことです。SDGsが掲げる「すべての人に健康と福祉を(目標3)」、「働きがいも経済成長も(目標8)」の達成に努力していることをアピールでき、将来的にはESG投資などの対象になることも期待できます。

 

健康SDGsの実践を通じて、労働市場で「従業員を大切にする会社」というイメージが高まれば、優秀な社員を採用しやすくなります。社員も安心して仕事することができ、離職率や病気による休職率も低下しやすくなります。

 

企業のサポートを背景に従業員の「健康力」が高まれば、生産性の向上も期待できます。「自社で働く人たちを大事にする会社」だというイメージが従業員に浸透すれば、会社への忠誠心や仕事へのやる気が高まりやすくなるためです。結果として会社組織が活性化し、業績の改善につながるわけです。こうした意味で、企業の従業員の健康サポートの流れはさらに強まっていくと考えられます。

 

(編集協力 P&Rコンサルティング)
 

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