「ファン」を大事にすべきこれだけの理由
■Q:「時代」って?
和田 ファンベースをする理由の2つめの「時代」について教えてください。
さとなお 時代については、①人口急減 ②ウルトラ高齢社会の到来 ③若者の物欲減少と独身者の増加 ④超成熟市場による消費意欲減退 ⑤情報過多と二極化、この5つがキーワードです。
①人口急減は下の図の通り、ジェットコースターのように人口が減っていきます。平均で毎年100万人都市が1つずつ消滅する勢いです。こうやってマーケットが縮んでいく時代、新規の取り合いは修羅の道です。それよりも今買ってくれているファンを大切にするのが先決だ、ということです。
②シニアのお財布のひもが固くなってきていて、新しい商品になかなか振り向いてくれません。シニア世代は貯金しなきゃって思っています。これも新規の需要が減るってことですね。
③若者の消費は減り続けている上に、2035年には「人口の5割が独身」の時代がやってくるとも言われています。結婚とか子育てとかのライフスタイルの変化が訪れないので需要にも大きく影響を与えるでしょう。需要は確実に減っていきます。
④は、超成熟時代は需要が減るということ。米コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授の有名な「ジャムの実験」って知っていますか?
和田 あ、聞いたことあります。選択肢が多いと選べないというのですね。
さとなお そうですそうです。あるスーパーで「豊富に品揃えすると売上が伸びる」ことを証明するために、24種類のジャムを置いた売り場と、6種類しか置かない売り場で比較調査したんですね。スーパーとしては24種類のほうが売れるだろうと予測したけど結果は逆だった。
24種類の売り場では3%しか買わなかったのに、6種類の売り場では30%近くが買ったんです。選択肢が多いほど人は選ぶのに悩み、選んだ結果が本当にいいのかも気になり、自信をなくし、結局選ぶのをやめてしまうのです。今はどんな商品でも選択肢が非常に多い時代。需要は減っていくと考えてもいいかもしれません。
和田 数字でも出てるんですね。
さとなお ⑤情報過多と二極化は、受け手の二極化が進み新規獲得のための広告宣伝がいよいよ届きにくくなってきたってことですね。
とにかく僕らは異次元の情報量に囲まれていて、2020年で59ゼタバイトの情報が1年間に流れたんです。1ゼタバイトが世界中の砂浜の砂の数ですから、もう無限ですよね。その59倍の情報が1年間に流れたことになります。
これだけ情報が多いと、メディアに出しても話題化しても砂粒がちょっと増えるだけです。基本届かないし見てくれない。覚えてもくれない。また、コンテンツやエンタメも急激増していて、たとえばYouTube だけで1日に82年分の動画がアップされるといいます。
和田 えっ! 82年! そんなにですか? こんなに情報があったら、興味がない商品には誰も振り向いてくれないですね。
さとなお そうなんです。ただ、見てくれる人もいます。それがファンの方たちです。ファンは自分から情報を探して見に来てくれます。