(※写真はイメージです/PIXTA)

新規顧客の開拓よりも目の前のファンを大切にする「ファンベースマーケティング」の考え方が広がっています。それはなぜでしょうか。コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之氏と世界142カ国の社員中2位の営業成績を挙げ、成約率98%を記録した和田裕美氏が著書『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)で解説します。

2割のファンが全体の売上の8割を支えている

■Q:ファンベースって何ですか?

 

和田 ここでは、さとなおこと佐藤尚之さんにファンベースについて、私、和田が質問していきたいと思っています。早速ですが、さとなおさん、ファンベースって何ですか?

 

さとなお ファンベースとはファンの方たちを何よりも大切にしてより幸せになってもらう関係を築きながら、中長期的に売上や価値を上げていくという考え方です。ではファンって何かというと、僕の定義するファンとは、企業やブランド、商品が大切にしている価値を支持してくれている方たちを意味します。

 

和田 すごく共感します。ファンベースって個人の営業にも必要なことですよね。

 

さとなお そうですね。僕は個人の営業のことは詳しくはわからないけれど、モノやサービスの存在やよさを伝えて、いずれはファンになってくださるお客さまと関係を築くことはとても大事です。ファンの方たちが売上を支えてくれるからです。

 

和田 ファンの方たちが売上を支える?

 

さとなお そう、ファンベースが大切な理由として、3つ挙げられます。「売上」「時代」「類友」です。まずは「売上」から説明していきましょう。ある有名な飲料ブランドの調査結果がありますが、たった8%のコアファンの方たちが全体の売上45%を支えているでしょう? コアファンはくり返し買ってくれているということなんですね。

 

宣伝費を数億円かけて新規顧客に「飲んでみたい」と思わせても、そう思った人たちはたったの7.5%しか売上を支えていない。つまり1回は買ったけどそれでやめてしまったのでしょうね。でも、コアファンとファンの方たちはくり返し買ってくれて、全部で売上の89%を支えているということがわかります。これを一般化したものをパレートの法則と呼びます。

 

出典)和田裕美著『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)より。
出典)和田裕美著『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)より。

 

■Q:パレートの法則って?

 

和田 さとなおさんは、よく「パレートの法則」についてお話しされてますよね。

 

さとなお そう、2割のファンが全体の売上の8割を支えているという経験則です。だから2割の人を大切にしていかなければいけない。

 

和田 2割ですか…。でもお客さまが100人いたら100人の方に好かれたいって思ってしまいますよね。企業でも個人でも。欲張りなんですけど(笑)。

 

さとなお 全員に好かれたい嫌われたくない、そう思うのは当たり前のことです。でも、みんなに好かれようとするとみんなを失います。2割のファンの方たちが大切なんですね。そしてその方たちのライフタイムバリュー(LTV)が上がると、じわじわとですが売上は伸びていきます。実際、100人集まってもファンになってくれるのは約20人くらい。少ないかなと思うかもしれないけれど、その20人のファンの方たちが長く継続して買ってくれたり、周囲の友人知人に勧めてくれるわけです。

 

たとえば、企業側がファンのためのイベントなどを実施すると、そういう方たちは「きっとこの人も好きなんじゃないかな?」と自分の友人を連れてきてくれたりします。そうやって紹介のすそ野がどんどん広がっていくわけです。

 

和田 みんなに好かれなくていいんですね。本当にファンになってくれて、ずっとファンでい続けてくれる2割を大切にする。そもそも、どんなに人気のある人でも、全員には好かれませんもんね。「誰にでも好かれている人が嫌い」っていう人もいますもんね。

 

さとなお そうですね。より多くの人に好かれよう、新規ファンを開拓しようと躍起になって次々に新しいイベントを仕掛けたりしていると、本当に大切にしたい2割の人が離れていってしまう。結果、安定した売上を築くことができなくなってしまいます。

 

出典)和田裕美著『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)より。
出典)和田裕美著『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)より。

 

和田 わかりやすく、お店とかで例えるとどうですか?

 

さとなお あるラーメン屋さんがあったとして。「この絶妙な辛さがクセになるよね」と、常連になってくれる人が2割だとします。残り8割の人は「ちょっと辛すぎる」「自分の求めている味とは合わないかな」「悪くはないけど、常連になるほどでもないかも」という感じ。なのでその8割を意識してしまって「もっと多くの人にうちのラーメンを好きになってもらって売上を上げたい!」と、味をマイルドに変えてみたら、今まで売上を支えていたファンが離れるわけです。

 

8割の人たちも味を変えたからって常連として残るかどうかなんて誰もわかりませんよね。そうして売上が激減して閉店してしまった、みたいな。実は、こういうことは結構世の中で起こっているんです。

 

和田 なるほど。わかりやすい!

 

さとなお このお店には、絶妙に辛いラーメンを提供したいというメインコンセプトが元々あったと思います。そして、そのコンセプトに共感するファンができていた。だからそのまま、その味や考え方を好きになってくれた2割のファンを大切にし、その味を守っていったほうがよかった。

 

そしてそのファンたちをもっと喜ばせるサービスなどをしていくと、ファンが友人とかに勧めてくれたり連れてきてくれたりするんです。間口を広げるか、コアなファンを大事にするか……。確かに、そのあたりの見極めは難しいです。でも、これからは後者を選択する時代だと思っています。

 

次ページ「ファン」を大事にすべきこれだけの理由

本連載は和田裕美氏の著書『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

ファンに愛され、売れ続ける秘訣

ファンに愛され、売れ続ける秘訣

和田 裕美

かんき出版

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