(※写真はイメージです/PIXTA)

関係良好だった夫の両親が、高齢となって相次ぎ他界。地方都市の「思い出の実家」が空き家となると、夫はがぜん張り切って、家族全員の移住を計画しはじめました。長年にわたり東京を生活拠点としてきた妻と子は困惑しますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

「お父さん、それ、家族のためになる?」

佐藤さんの夫にとっては懐かしい故郷へのUターンですが、佐藤さんと息子さんにとっては、イベントとして遊びに行く場所に過ぎません。夫が意見を押し通すのは、家族全員にとっていい結果にならないかもしれません。

 

筆者と筆者の事務所の税理士は実家を売却し、都市圏の物件に買い替える方法も選択肢のひとつになると提案しました。

 

筆者はクライアントの方へのアドバイスとして、価値の低い場所に不動産をまとめて持つよりも、価値の高いところへ分散して保有する方法を提案しています。佐藤さんの夫が相続予定の不動産は、地方都市とはいえ売却可能なエリアにあるため、移住するより売却し、その資金で都市部の収益物件を購入したほうが、資産活用として有効だといえます。また、子どもへの相続を考えたときもその方がプラスだといえます。

 

佐藤さんは、筆者と税理士の説明に納得した様子でした。

 

「息子への負担を考えたら、その方がずっといいですね…」

 

とはいえ、住居は家族の最重要課題ですから、後悔のない選択ができるよう、しっかりと話し合うことが大切です。

 

「私も夫の実家には喜んで訪問していましたが、それは義父母が良くしてくれたからでして…。生活するとなると、まったく話は別ですよね。知人もいませんし、土地勘もないし、健康不安が出てくるタイミングで移住するのはどうなのかと」

 

数週間後、佐藤さんから連絡がありました。

 

「夫が、実家の売却を決めました。息子に移住を反対されたことが決め手となりました」

 

大学院生の息子は引っ越しに難色を示し、現状では通学できないため、卒業まではアパートを借りる必要があること、また、就職後も頻繁に訪問できないこと、とてもではないが受け継いでいくことができないことを淡々と説明し、「お父さん、これ、家族のためになるのかな?」ととどめを刺されると、夫は意気消沈し、佐藤さんの提案である「売却」に従うことになりました。

 

「実家を売却したお金は、義姉と折半します」

 

売却後のことはまだ検討中とのことですが、家族の反対を押して移住するという結果を回避できたことは、佐藤さん一家にとってよかったと思われます。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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