インフレ収束のために求められる「ショック」
1%を超える利上げを実施すべき理由①…市場には「ショック」が必要
米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月20~21日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開く予定です。
筆者は、FRBが「1%を超える」利上げを実施すべきであり、それが合理的であると考えています。そう考える理由を挙げます。
現状ですでに「0.75%」の利上げが織り込まれています。
とはいえ、ジャクソンホール会合以降の「株価の下落」も「長期金利の上昇」もさしたるものではなく、しかも、それぞれ一服しています。
株価が下がらず、金利が上がらなければ、FRBはインフレが落ち着くかどうかに自信を持てなくなります。
少し過去を振り返ると、ディスインフレになった1990年代中盤以降これまでの金融政策は、①緩和方向へは景況感や株価の回復に向けた刺激を強くするために「サプライズ重視」で取り組んできました。
1998年のLTCM危機や2001年の同時多発テロ直後の大幅利下げ、2008年の金融危機や2020年のパンデミックを受けた巨額の流動性供給などがその例です。
逆に、➁引き締め方向へは、次の行動をあらかじめ織り込ませる「期待の役割」を重視してきました。金融市場にショックを小さくし、景気を延命させるためです。
実際、FRBは今年3月16日に最初の利上げを決定しましたが、パウエル議長はそれに先立つ3月初めに「0.25%」の利上げ提案を明言しました。
当時は「0.5%」の利上げが警戒されていました。また、5月4日に約22年ぶりとなる「0.5%の利上げ」を決定しましたが、4月下旬には「5月の会合では0.5%の利上げが議論される」と述べました。
しかし、いま必要なのは「インフレの収束を確実にするような株価の調整や金利の上昇」であり、そのためには「ネガティブなショック」が求められます。
すでに「0.75%」の利上げが織り込まれているいま、「0.75%」の利上げを実施しても、それがショックにならないのは明らかです。これを大幅に超える引き締めでしかショックを与えることはできません。
あわせて、利上げと同時に公表される『四半期の経済見通し』でも「今後の大幅な利上げの継続」を示すべきでしょう。「今後は利上げ幅が小さくなる」という現在の予想に沿った見通しを出してしまうとサプライズになりません。
ただし、実際には、そのとおりの利上げを続ける必要は必ずしもありません。金融市場はその見通しを見ただけで株式に売りを出すため、①今後の利上げ見通しが大幅で、②そうした利上げの実施が信頼を持って受け止められれば、効率的に株式市場を調整させることができます。
9月の機会を逃せば、次の『四半期の経済見通し』は12月まで待たなければなりません。それまでに株式市場や債券市場がこなれてくれば、さらなる時間や対応が必要になります。