(※写真はイメージです/PIXTA)

「うつ病」は、「憂うつ」や「落ち込み」などと何が違うのでしょうか。精神科医・庄司剛氏が解説します。

「うつ病」と憂うつ、落ち込み、うつ状態の違いとは?

■憂うつや落ち込みは「うつ病を診断するための症状」

自分は「うつ」なのか、「うつ病」と診断されるのかと気にされて質問される患者さんは多くいます。

 

いわゆる「うつ」の診断について簡単に説明すると、「うつ病」というのはいってみれば少し古い概念で、現在の標準的な診断基準であるDSM(精神障害の診断と統計の手引き)では「大うつ病性障害」、ICD(国際疾病分類)では「うつ病エピソード」などとカテゴライズされるものがいちばん近いと思います。

 

いずれもいちばん大事な部分は気分の落ち込み、憂うつ気分が一日中ずっと毎日のように続くということです。いちおう2週間以上となっていますが、長い間ずっとそのような状態が続くことを「うつ病」と呼んで差し支えないと思います。憂うつ気分、気分の落ち込みというのは診断するための症状ということです。

 

■「うつ病」と「うつ状態」の違いは?

「うつ状態」というのは正式な診断名ではないですが、「うつ病」に準じる状態(診断基準に完全には当てはまっていない)という意味合いで使われることが多いです。

 

■「うつ病(大うつ病性障害)」と「適応障害」の違いは?

「適応障害」というのもよく使われる病名ですが、これはなんらかのストレスが原因となってさまざまな症状を示している状態です。「さまざまな症状」のなかには抑うつ気分や不安、イライラ、攻撃的な言動などを含みます。ストレスの発生後から生じたそのような症状があり、かつ「大うつ病性障害」やその他の不安障害などの診断基準に当てはまらないものを「適応障害」と診断するのです

 

したがって、ストレスを原因とした抑うつ気分をともなう病態は、「大うつ病性障害」の診断基準に当てはまる場合はそう診断し、当てはまらない場合は「適応障害」と診断されることになります。

「うつ(大うつ病性障害)」の診断に使われる症状

「大うつ病性障害」の診断基準には強い悲しみや落ち込みだけでなく、興味や関心の減退、楽しみや喜びの消失もあります。ですからひどく気分が落ち込み悲しくなるということがなくても、どんなことにも興味がもてず、なにをしても楽しいと思えないという場合もうつ病である場合があります。

 

また睡眠の障害や食欲の異常もよくある症状の一つです。

 

不眠は寝つけないだけでなく、途中で何度も起きてしまったり、朝早く起きてしまったり、時間的には長く寝ているのだが夢ばかり見てぐっすり眠れていない、ということもあります。睡眠は結局安心してリラックスした状態で休むものですから、安心やリラックスができない落ち込んだ状態では良い睡眠が取れないのだと思います。また長く寝てばかりいる過眠ということもあります。これは場合にもよりますが、例えば向き合いたくない現実にまさに目をつぶっているということもあります。

 

食欲も減退だけでなく、過食になってしまうこともあるし、食欲減退と過食が交互に続く場合もあります。食事もまた基本的には安心して落ち着いた状態で取るものですからうつ病の状態ではそれが難しくなるのでしょうし、また食べると少し不安が和らぐという側面もあるので、過食でそれを無理やり得ようとしている場合もあります。

 

 

庄司 剛

北参道こころの診療所 院長

 

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※本連載は、庄司剛氏の著書『知らない自分に出会う精神分析の世界』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

知らない自分に出会う 精神分析の世界

知らない自分に出会う 精神分析の世界

庄司 剛

幻冬舎メディアコンサルティング

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