(※写真はイメージです/PIXTA)

自分でも意識することのできない心の奥底、すなわち「無意識」を探っていくと、過去のつらい記憶や体験から抑え込んでしまっていた自分の本来の感情が見えてきます。多くの人が経験する感情の奥には、どのような真実が隠されていたのでしょうか。精神科医・庄司剛氏が解説します。※本稿で紹介するケースは、個人が特定されないように大幅に変更したり、何人かのエピソードを組み合わせたりしています。

「怒り」や「攻撃性」が問題になるケースの精神分析

不快な感情のなかでも怒りは特にエネルギーが強く、コントロールできないとキレて相手を攻撃することがあります。直接攻撃できないと立場の弱い人に八つ当たりをして心を鎮めようとする場合もあります。また、発散できないときには、「情けない」とか「自分はダメな人間だ」と卑下し、自分自身を攻撃してしまいます。

CASE:DV加害者が抱えている「被害感情」

■加害者にも、加害者なりの傷つきや苦悩があることを忘れてはいけない

心の傷は、事故や災害、人から受けたつらいできごとなどが原因のケースが多いため、精神分析を受けるのも被害者側だと思われがちかもしれません。しかし、加害者にも加害者なりの傷つきや苦悩を抱えていることがあることもまた事実です。犯罪などでも同じですが、加害者がただ非難されたり処罰されただけではその病理は改善されず、再犯につながることもあります。しかし治療者としては暴力の加害に対して批判的な気持ちにさせられることも少なくないため、治療者が自分の感情(逆転移)をよく内省し、それを行動化してしまわないようによく気をつける必要があります。

 

■会社で虐げられ、そのうっ憤が「DV」につながった男性

Xさん(仮名)は家族に対する暴力(DV)があり、それが原因で妻が出て行ってしまいました。

 

もちろん妻や子どもに暴力を振るっていたことは悪いと自覚しているのですが、彼自身も会社で虐げられていて精神的に追い詰められていたため、家族に当たってしまったそうで、「自分はどうすれば良かったのか分からない」と混乱して私のところにやって来ました。

 

妻が出て行く前の状況を聞くと、Xさんが仕事からくたくたになって帰宅しても家の中はいつも張り詰めた雰囲気で、まったくくつろげず、些細なことにもイライラして言い争いになり、時に暴力になるのだと言います。そのため妻との関係はどんどん悪くなり、なにも話していないときにも冷戦状態という悪循環のようでした。

 

また、Xさんの仕事の環境も劣悪でした。Xさんの会社は従業員が50人ほどの規模ですが、それだけの組織でも有名大学の出身者は優遇され、たいして仕事ができなくても難なく自分の上司になっているといいます。そのうえ、その上司は自分たちを見下していて、誰かがミスをすると自分の評価が下がると激怒して部下たちに責任を押しつけ、良い成果を出すと自分がアドバイスしたのだと手柄を横取りするのだそうです。

 

そんな上司ですから社長には信頼されており、ちょっとでも反論したり否定的な意見を言おうものなら、尾ひれをつけて社長に告げ口をして閑職に追いやられたりもするため、怖くて誰もなにも言えず、上司の顔色を見ながら仕事をしている状態で神経をすり減らし、社員は雇っては辞めての繰り返しです。

 

それでも、Xさんは転職市場における自分の価値に自信がなかったため我慢して勤め、上司の機嫌を取りながらしたがっていました。陰では「腰ぎんちゃく」と言われているのも知っていました。

 

このように職場では弱い立場に置かれているためにフラストレーションはたまるばかりでしたが、家では妻に対して強い立場にいると感じていたため、その怒りが何倍にもなって妻に向けられてしまうことになります。

 

■Xさんの振る舞いは、かつて「こうはなりたくない」と嫌った実父そのもの

彼の考え方の背景には強者と弱者の確固たるヒエラルキーが存在しているようです。強いものは絶対の強者であり、弱いものはそれにしたがわなければならない。したがわなければ制裁されるというわけです。

 

この考え方の源流にはXさんの生い立ちが関係しているようでした。彼の父親は腕の良い職人なのですが学歴がないのを卑下しているところがあり、権威に弱くて自分より上の人にはペコペコしていました。それを知られないように家族の前では威張り散らし、Xさんが口答えをすると拳骨(げんこつ)が飛んできました。旗色が悪くなると、口では説明できないので手が出るというわけです。

 

そんな父親が嫌でたまらず、「こんな人にはなりたくない」と大学に進学したXさんでしたが、社会に出てみれば大学卒のなかでもいわゆる有名大学出身の同僚が幅を利かせており、結局は学歴コンプレックスをもつことになったのです。

 

つまり強いものと弱いもの、権威者や支配者と非支配者、上下関係といったものが厳然と存在している限り劣等感はなくならないのであり、そのうっ憤は自分が下だと判断したものに向けられるという構造が続いていたのでした。

 

 

庄司 剛

北参道こころの診療所 院長

 

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    ※本連載は、庄司剛氏の著書『知らない自分に出会う精神分析の世界』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    知らない自分に出会う 精神分析の世界

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    庄司 剛

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