毎年1万人がなる「心不全」…再発を防ぐために「控えるべき食事、取るべき食事」【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

心不全は、一度発症したら治らない病気です。もし発症してしまった場合には、再発・増悪を予防する「治療」が重要です。ただし、心不全の治療は病院などの医療機関で行うものだけではありません。自ら生活習慣を見直したり、誤った習慣を改善したりする自主的な取り組みがあってこそ実を結び、効果が現れるのです。本稿では、自宅でも取り組むことが可能な「食事療法」について見ていきましょう。“心疾患・心臓リハビリ”の専門医・大堀克己医師が解説します。

心不全は再発率が高い…大きな原因は「日々の食事」

心不全治療において重要なのは、再発をいかに防止するかという点です。研究によれば、心不全の再入院率は1年以内で約3割にのぼることが分かっています。

 

ステージCまで進んでいて、いったいなぜ心不全が再発してしまうのかという原因を探ったところ、ある研究によれば次のような結果になることが分かりました。つまり、心不全で再入院する原因の約3割が、「塩分・水分制限の不徹底」であり、日々の食事が原因で再発を招いているといえるのです(図表1)。

 

Tsuchihashi M, et al:Jpn Cir J 2000:64:953-959より改変
[図表1]心不全再入院の原因 Tsuchihashi M, et al:Jpn Cir J 2000:64:953-959より改変

 

ステージAやステージBは、いわば心不全を発症する前の予備段階。本当に心不全を予防したり治療したりするには、心不全を発症したステージCの段階から考えるのではなく、ステージAの段階から手を打つことが必要。
[図表2]参考:心不全のステージ分類 ステージAやステージBは、いわば心不全を発症する前の予備段階。本当に心不全を予防したり治療したりするには、心不全を発症したステージCの段階から考えるのではなく、ステージAの段階から手を打つことが必要。

なぜ「塩分・水分の取り過ぎ」がよくないのか?

塩分の多い食事を続けると、血液中の塩分濃度が高くなります。そうなると、血液の浸透圧を一定に保つために血液中の水分が増え、結果的に、体内を循環する血液量が増加します。いわば細いホースの中を、通常よりも多い水が一気に流れるような状態です。その結果末梢血管の壁に掛かる抵抗が高くなって、血圧が上がり心臓に負担が掛かってしまうのです。

 

また、塩分の過剰摂取は間接的に悪玉コレステロールを増やしたり、血栓をできやすくしたりするリスクもあります。自宅で調理をする際には、塩の使い過ぎに気を付けたり塩分を多く含むハムなどの加工食品を控えたり、毎日の食事では減塩を心掛けるとよいでしょう。

 

ただし、ここで一つだけ注意すべきことがあります。食事の量が少な過ぎるため、結果として「減塩」が達成されている場合です。日本心不全学会は「食事量が不足してエネルギー摂取が不良になっている場合は、減塩よりエネルギー確保が優先されるべき」と2018年に勧告しています。

 

また、血圧を上げないという観点からいえば水分を取り過ぎないということも大切です。水分を取り過ぎると肺に血液がうっ滞したり、全身の血液量が増えたりして、高血圧を招くからです。

 

特に、腎機能が低下している人は水分の取り過ぎに注意が必要です。医師の指示を守り、1日に飲んでもいい水分量を守るようにしなければなりません。

一方、積極的に取ってほしいのが「タンパク質」

もう一つ、食事で気を付けたいのがタンパク質です。

 

人体の重要な構成要素であるタンパク質が不足すると、栄養不足になったり、筋肉量が減少したりします。最近では「フレイル」といって、加齢に伴う筋力や体力の衰えが問題になっていますが、タンパク質が不足するとこのフレイルを招きやすくなります。

 

フレイルが進行すると、要介護の状態になったり、認知機能障害やうつなどの精神・心理的な問題を引き起こしたりします。そうならないためにも、しっかりタンパク質を摂取することが大切です。

 

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、15歳以上の全年齢区分において、毎日、体重1キロあたり0.66gのタンパク質を摂取するのが望ましいとされています。しかし、フレイルを予防するためにはもっとたくさんのタンパク質が必要で、65歳以上の高齢者は体重1キロあたり1.0gのタンパク質が必要、とされています。つまり、体重60キロの人なら毎日60gのタンパク質を取ることが望ましい、ということです。

 

目安として、たまご1個(50g)に含まれるタンパク質は約6g、鶏ささみ100gに含まれるタンパク質は約24gです。

 

高齢になって食欲が衰え、以前に比べて食べられなくなったという人もいると思います。そういう場合は、量は少なくても栄養をしっかり補給できる食品を選ぶことが大切です。最近では、タンパク質やアミノ酸を豊富に含む便利な食品もたくさん市販されているので、そういったものを活用するのもよいと思います。また、食事の摂取量が少なくなったときには、タンパク質を多く含む食品(例えば牛乳、飲むヨーグルト、プリン、枝豆など)をおやつとして取るとよいです。

心不全患者は「食事によるエネルギー補給」が大切

それから、食事全体を通して気を付けてほしいのが、心不全の人は呼吸苦により健康な人よりも呼吸量が増え安静時のエネルギー消費量が18%増加する、ということです。つまり、それだけたくさんのエネルギーを食べものにより摂取しなければならないのです。

 

その反面、心不全の人は腸管の浮腫により食欲不振となり、食物の消化や栄養の吸収が悪くなりがちです。「高齢になって食事量が減った」という人もいると思いますが、1日3回、きちんと食事を取ることを意識することが大切です。近年では高齢者の栄養不足が問題になっていますが、少なくとも魚や赤身の肉、豆腐などの大豆商品を毎食1品取るようにするべきです。そして、亜麻仁油やえごま油、青魚など良質の油も体を動かすためのエネルギー源になります。こうした油はタンパク質や糖質を含まないため、腎臓病や糖尿病の人にも最適です。


 

大堀 克己

社会医療法人北海道循環器病院 理事長

 

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    社会医療法人北海道循環器病院 理事長 日本胸部外科学会指導医
    日本外科学会認定医
    日本医師会認定産業医

    1968年、札幌医科大学胸部外科(現心臓血管外科)に所属して以来、今日まで一貫して心臓血管系と呼吸器の疾患に対する外科療法に携わり、現在はドイツのハンブルク心臓リハビリテーション協会と連携しつつ虚血性心疾患に対する心臓リハビリテーションに取り組んでいる。

    著者紹介

    連載心不全に負けない完全治療マニュアル

    ※本記事は、大堀克己氏の著書『心不全と診断されたら最初に読む本』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

    心不全と診断されたら最初に読む本

    心不全と診断されたら最初に読む本

    大堀 克己

    幻冬舎メディアコンサルティング

    心不全と診断されても諦めてはいけない! 一生「心臓機能」を維持するためのリハビリテーションと再発予防策とは? “心疾患・心臓リハビリ”の専門医が、押さえておきたい最新の治療とリハビリテーションを解説します。

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