(画像はイメージです/ココナラ法律相談)

会社で従業員を雇うと、毎月給与の支払い作業が発生し、時間外手当や各種控除の計算を行ったうえで銀行から振り込む形になります。給与計算システム等を導入している企業もありますが、マンパワーに頼っている企業も少なくなく、人為的ミスにより集計や入力の誤りが生じ、金額を誤って支払ってしまうようなケースも多くあります。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、過払い賃金の返還方法について南宜孝弁護士に解説していただきました。

②方法

次に方法です。

 

従業員は、何の告知もなく、いきなり給与と過払い分を相殺されると、日々の生活に差し支えてしまいます。また、何の予告もなく相殺してしまうと、従業員とのトラブルを招きます。

 

そのため、相殺をする際には、必ず従業員に対して、相殺することを予告するようにします。この場合、言った言わないの水掛論にならないように、文書かメール等の形に残る方法で予告するようにします。

③金額

最後に、金額です。

 

過払い分が30万円で、給与の手取額も30万円で、これを同じ金額で相殺すると、従業員のその月の給与はゼロになってしまい、明らかに日々の生活が脅かされます。そのため、相殺するにしても、相殺できる金額には限度があります。

 

その限度額は、給与額から税金や社会保険料等を引いた手取額の4分の1を目安とします。

 

以上を踏まえ、仮に労使協定等がなかったとしても、過払いの支払い日の翌月から3ヵ月以内で、事前の予告をした上で、手取額の4分の1に留まる金額を相殺するのであれば、賃金全額払いの原則に反しない可能性があるといえます。

 

その他の方法として、本人から同意を取って給与から差し引く方法もあります。ただ、この同意というのは単純に従業員から承諾をもらうだけでは足りません。強要されたものではない従業員の自由な意思によることが必要です。

 

そのため、今回のような事案であれば、本人からの同意を取ることは難しいでしょう。

最後に

給与の過払いがあった場合には、できるだけ早い段階で労使協定等による控除や相殺をするようにして、過払いの回収を行います。

 

もし万が一、過払い分の給与に関する労使協定や就業規則がない場合には、専門家に相談するなどして、給与の過誤払いが生じる前にこれらの規定を整備しておくことが肝要です。

 

そして、何よりも、給与計算のダブルチェックや給与計算のマニュアルの作成をすることで、給与計算の人為的なミスを生じさせないことが最も重要といえるでしょう。

 

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