(※写真はイメージです/PIXTA)

イマドキの若手社員は「課長になりたがらない」といいます。上昇意欲が湧かないのは当たり前です。課長に昇進して、責任が重くなるわりに、もらえる給与がさほど変わらないからです。上を目指したくなる仕組みにするべきです。北見式賃金研究所長の北見昌朗氏が過去30年間の給与を検証します。

給料が高いほど保険料負担は大きい

社会保険料には「標準報酬月額保険料額表」というのがある。健康保険料は1997年には60万5000円が上限で、これ以上の給与になっても保険料が変わらなかった。2020年になると協会けんぽ(東京)の場合、上限額が63万5000円に引き上げられた。つまり高い給与の人の保険料負担が大きくなったのだ。

 

ここで2人の保険料を比較する。「給与80万円」と「給与20万円」である。

 

「給与80万円」の人の保険料及び控除後の給与は、次のとおりである。

1997年
健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料=社会保険料合計8万3572円

給与80万円-社会保険料合計8万3572円=社会保険料控除後の給与71万6428円(あ)
  ↓
2020年(東京都の場合)
健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料=社会保険料合計10万2787円
給与80万円-社会保険料合計10万2787円=社会保険料控除後の給与69万7213円 (1万9215円減)(い)

 

「給与20万円」の人の保険料及び控除後の給与は、次のとおりである。

1997年
健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料=社会保険料合計2万5550円
給与20万円-社会保険料合計2万5550円=社会保険料控除後の給与17万4450円(う)
  ↓
2020年(東京都の場合)
健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料=社会保険料合計2万9960円
給与20万円-社会保険料合計2万9960円=社会保険料控除後の給与17万040円 (4410円減)(え)

 

注:年齢は40歳以上で、介護保険料を払っている前提。

 

両者の社会保険料控除後の給与は、次のように下がった。

 

(あ)-(い)=1万9215円減
(う)-(え)=4410円減

 

このように給与の高い人が狙い撃ちされるように保険料を取られ、手取り収入がダウンした。社会保険料はチビチビ上がるので、あまり実感はないかもしれないが、積み重なると大きい。

 

ちなみに、この「80万円」という給与は年収960万円という意味であり、東京都では従業員300人以下の会社の常務取締役クラスの年俸である。「20万円」の人は新卒初任給をイメージしている。

 

北見 昌朗
北見式賃金研究所所長

 

 

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