リーマンショックの翌年が給与のドン底
給与という観点では、過去30年間でドン底は2009年(平成21年)だった。
2009年といえば、読者諸兄姉には記憶に新しいだろうが振り返ってみる。
前年の2008年の9月に米国のリーマン・ブラザーズの経営破綻に伴い、同社の日本法人が民事再生法の適用を申請して倒産した。
その後も大和生命保険など経営破綻が相次いだ。パナソニックが三洋電機の買収に乗り出すなど業界再編も目立った。
10月~12月の国内総生産は前期比3.3%減で、年率換算12.7%減となり、オイルショック直後以来の二桁減となり、景気後退が深刻化した。
社会保険労務士の筆者は、10月から愛知労働局に日参していた。雇用調整助成金の申請のためだ。自動車関連の製造業が顧客に多かったので、休業の助成金を得るため走り回っていた。連日、帰りも遅くなった。当時のことはよく覚えている。
派遣切りにあった人も多く、師走は殺気立っていた。
明くる2009年は、年初から暗い話題が多かった。労働局の助成金の窓口は電話もかからない状態で、休業助成金を申請する会社担当者でごった返した。
ピーク時の1997年と比較すると、2009年の給与は次のとおりだ。(1年以上勤務者・非正規雇用者含む)
筆者が使用するのは国税庁の民間給与実態調査のデータである。年末調整の結果なので信憑性は高い。
この調査は「給与総額=勤労者数(1年以上勤務)×平均年収」という算式になっている。この「給与総額」は日本国民が一年中汗水流して稼いだ“国富”ともいえるものだ。
1997年
給与総額211兆5080億円=勤労者数4526万人×平均年収467万円
↓
2009年
給与総額182兆8745億円(28兆6334億円減、13.5%減)=勤労者数4505万人(20万人減、0.5%減)×平均年収405万円(61万円減、13.1%減)
平均年収は、なんと61万円も減っていたのだ。社会保険料率も引き上げられていたから、手取りはガッタガタだ。家計は火の車だったに違いない。それだけでなく日本という国全体がニッチモサッチモいかない状況にまで陥っていたのだ。
給与総額は次のとおりだった。
1997年
給与総額211兆5080億円
↓
2009年
給与総額182兆8745億円(28兆6334億円減、13.5%減)
この13年間、失われた給与総額はなんと28兆円に達した。
ここまで落ち込んだら、日本の仕組み自体がなりたたなくなる。例えば健康保険は保険料収入が落ち込んだため大幅な赤字に陥り、その後保険料率の引き上げに踏み切った。