(※写真はイメージです/PIXTA)

イマドキの若手社員は「課長になりたがらない」といいます。上昇意欲が湧かないのは当たり前です。課長に昇進して、責任が重くなるわりに、もらえる給与がさほど変わらないからです。上を目指したくなる仕組みにするべきです。北見式賃金研究所長の北見昌朗氏が過去30年間の給与を検証します。

給与格差が小さいから活力を失った?

格差にも資産格差などいろいろな種類があるが、少なくとも“給与所得”に関しては、実は格差は拡大していない。給与データから見えてくるのは「日本ほど給与所得格差の小さな国はない」という事実である。

 

なぜ、日本は国力が低下して負け組になったのか?

 

要因は複雑に絡んでいて一概にいえないが、一ついえるのは悪平等のせいだと筆者は思う。むしろ給与所得格差が小さいことが、逆に活力を失わせる要因になったと筆者は考える。

 

ここからは「会社経営」という観点で、給与格差の問題を論じてみたい。社内における給与格差が小さ過ぎることが日本の企業が敗退した一因になったと考えるからだ。

 

欧米では、経営幹部と一般従業員とでは大きな給与格差がある。中国でも、給与は10倍くらいの格差がすぐにつく。そのような国と比較すると、日本株式会社の給与制度はいかにも異様だ。

 

もしも、頑張っている人も、そうでない人も、同じように扱われ給与や賞与に差がない会社があったら会社はどうなるだろうか? 「そんな会社があったら、皆が手を抜くので業績が下がって潰れてしまうだろう」と想像するであろう。その会社が実際に存在するのだ。その名は「日本株式会社」である。

 

会社には、序列がある。社長、専務、常務、取締役、部長、課長、係長、主任という肩書が一般的にあって、それが序列だ。若手が競いあって、上を目指す組織でなければ発展はありえない。この序列に基づいて、給与の額にも差があるべきだ。昇進するにつれ給与が上がっていけば、昇進意欲も湧いてくる。逆に、例えば主任の給与が課長を上回っていて、部長と肩を並べるようでは従業員が白けてしまう。

 

イマドキの若手従業員は課長になりたがらないが、上昇意欲が湧かないのは当たり前である。課長になっても、もらえる給与がさほど変わらないせいだ。

 

日本の会社は、もっと“きちんとした格差”を作るべきだ。上を目指したくなる仕組みにするべきだ。

 

幹部と新人との間の給与格差について、さらに詳細に分析してみよう。

 

筆者は、中小企業の給与明細を集めて相場を導き出す「ズバリ! 実在賃金」という統計を毎年作っている。その調査のサンプルは数万人規模に及ぶ。

 

「ズバリ! 実在賃金 愛知県版 2022年」によれば、部長の年収は、一般従業員と比べて246万円多くて5割高いだけである。読者諸兄姉は、この社内の上下バランスをどう感じられるか? 筆者は、責任の大きさを考えれば部長や常務は低過ぎると思う。

 

 

「課長になっても大したことない。生涯ヒラで構わない」と若手に思われてしまうのは困ったものだが、そう思わせてしまう理由の一つに実は社会保険料がある。保険料は、給与が上がれば上がるほどゴッソリ取られてしまうのだ。

 

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日本人の給料

日本人の給料

浜矩子、城繁幸、北見昌朗、坂田拓也、野口悠紀雄 ほか

宝島新書

日本人の平均年収は20年の長きにわたり長期減少が続いている。2000年代には世界経済が伸長して日本の企業の業績も向上したが、給料は上がるどころか、下がり続けた。 日本人の給料減少は先進諸外国と比較すると際立ってくる。…

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