ハンセン指数 20,023.22 pt (▲0.73%)
中国本土株指数 6,872.26 pt (▲0.70%)
レッドチップ指数 3,721.59 pt (▲0.51%)
売買代金917億9百万HK$(前日1,027億8万HK$)
米パウエル議長は、景気よりも物価抑制が優先か
先週末、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催された経済シンポジウムでパウエルFRB議長は約40年ぶりの高インフレを沈静化する決意を表明。長期的に利上げを含めた金融引き締めを続ける必要性を強調した。
FRBの金融引締め姿勢に対して楽観的な傾向が強かった米国株式市場は、景気悪化懸念が強まり、値幅を伴って売り込まれた。
特に、来年度には利下げすら織り込んでいた市場にとっては、パウエル発言は強いけん制であり、成長鈍化などの痛みを伴ったとしてもインフレ抑制に注視し、景気よりも物価抑制が優勢という見解がはっきり示されたことは、今後のシナリオに変更を迫るものといえる。
パウエル発言の真意は、インフレ率の抑制を最優先とし、大幅な利上げを検討する可能性があることを示唆するものである。FRBが利上げを進める決意は、現在の経済指標の動向から考えて、変わることはないとみるべきだろう。
今回の株価の反応はやや過度に反応しすぎではあるが、利上げに対するペースの鈍化といった楽観的な見方は後退したものと考えるべきだろう。
アジア市場は米株安の流れを引き継ぎ全面安に
中国国家統計局が27日に発表した22年1-7月の工業企業利益は前年比から1.1%減と、1-6月の1.0%増からマイナス成長に転落した。調査対象の41業種のうち25業種が減益も、足元の経済対策や当局の金融緩和の期待が相場を下支えしている。
ハンセン指数は前日比0.73%安と3日ぶりに反落、ただ他アジア市場に対してアウトパフォームする動きが目立ち、下げ幅は小幅に留まった。先週発表された中国の景気対策期待が改めて好感されたほか、マーケットの売り材料となっていた電力需給のひっ迫問題に関し、一部地域で解消されつつあることも材料視された。
四川省では長期にわたる干ばつにより電力供給が圧迫され、深刻な電力不足に陥る可能性が懸念されていたが、気温の低下に伴い電力需要が緩和している。
週明け29日のアジア市場は米株安の流れを引き継ぎ全面安。円相場は約1ヵ月ぶりに1ドル=138円台に急落し、日経平均の下げ幅は一時800円を超えた。香港ハンセン指数は朝方、心理的節目となる20,000ポイント割れも、下値は底堅い展開が続いた。
セクター別では、電子機器が下落した。PC大手のレノボグループ(0992)は前日比4.6%安、動画配信のビリビリ(9626)は4.1%安、スマートフォンの小米(1810)は3.2%安だった。半導体関連も下落し、半導体ファウンドリーの華虹半導体(1347)は2.9%安、半導体製造のSMIC(0981)は2.0%安と下げた。
一方、フードデリバリーの美団(3690)は2.6%高と上昇。4-6期決算の赤字縮小を手がかりに逆行高となった。そのほかエネルギー関連株が上昇。石油販売の国海洋石油(0883)は1.4%高、ペトロチャイナ(0857)は0.5%高となった。
中国企業の米市場から締め出されるリスクは無事回避
中国本土市場は上海総合指数が前日比0.14%高の3,240.73と小反発、同指数は安く寄り付くも、徐々に下げ幅を縮小した。
前述した景気刺激策が相場を下支えしたほか26日、米国に上場する中国企業の監査状況の検査を巡り、米上場企業会計監視委員会(PCAOB)と中国証券監督管理委員会が問題の解決に向けて協力協定を結んだと発表、米国に上場している中国企業の監査状況を米当局が検査することを認める協定に調印した。
これにより、改めて中国企業が米市場から締め出されるリスクが回避された。前向きなスタートとみるべきだろう。米中が確実に最終合意に達した場合、9月に初回の検査が実施される見通しであり、双方が満足する結果が得られれば、より安心した材料になると考えられる。
今回の協力協定は、中国市場にとって長らくネガティブ材料となっていた同問題に対して明るい兆しとなり、前向きな進展を今後期待したい。
長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>