(※写真はイメージです/PIXTA)

「協調性」や「学力」を重視し、紋切り型の人材育成を目的とした戦後教育をいまだ色濃く引き継ぐ、現代日本の教育現場。社会に出てから必要な「独創性」や「問題解決能力」、「知識の運用」などの礎となる「主体性」の育成に重きを置かれない教育は、毎年新社会人が送り出されている社会全体にどのように影響を与えているでしょうか。世界中で多様な教育現場を視察し、独自に編み出した教育ビジネス構想を実現させるため、2015年にソニーグループ初の教育事業会社・株式会社ソニー・グローバルエデュケーション(SGE)を設立。現在同企業の取締役会長を務める礒津政明氏による著書『2040 教育のミライ』から、現代日本における教育の問題点とその改善策について解説します。

大手IT企業にデータと権力が集中した2010年代

教育の未来を考える上で絶対に外せないのが、インターネットの将来であり、Web3です。

 

Web3を私なりに少し厳密に定義すると、「オンライン上で実行されるプログラムやサービスに、金融資産であるトークン(既存のブロックチェーン技術を利用して発行される暗号資産)を組み込んだ、パブリック型のブロックチェーンを基盤とするインターネットの概念」です。

 

暗号技術やブロックチェーン技術の成熟によって実現への準備が整い、次のインターネットの形として期待されています。

 

[図表1]Web1.0/Web2.0/Web3.0の違い

 

2000年代の大きな転換点は、90年代までウェブページが静的でユーザーが一方的に受信するものだったのが、リアルタイムに変化するようになり、双方向(ブログやSNSなどで受発信できる環境)になったことです。

 

魅力的になったウェブには一般からのアクセスが大量に流入し、2010年代には巨大IT企業に富やデータが集中し、絶対的な権力を持つようになりました。

 

GAFAMを頂点とする巨大IT企業は莫大な資本をもとにあらゆる産業に触手を伸ばし、「データによる支配」を実現しています。

 

一方、ほとんどの企業やサービスはGAFAMのインフラに依存しているため、まさに首根っこをつかまれた状態です。万が一インフラに障害が起これば事業がストップし、データが消失しようものなら再起不能となってしまいます。

 

個人は個人で、無料のSNSはメールアドレスさえ変えればアカウントを作り放題。いくらでも記事や写真を投稿できますが、何かの事故や規約違反でアカウントがBAN(強制閉鎖)されると、その人は存在しなかったも同然になってしまいます。ユーチューバーはその典型です。

 

このように、行きすぎたプラットフォーマー(プラットフォームの提供者)への権力集中はさまざまな歪みをもたらし、逆にインターネットを脆弱なものにしてしまいます。

 

データの中央集権支配をユーザーの手に戻すことで、より民主的なコミュニティを構築していこう、というのがWeb3の考え方です。

 

Web3では、ネット上で情報を「読む」(Web1.0)、「発信する」(Web2.0)に加え、「所有する」という概念が加わりました。

次ページ実質的に「ユーザーにデータの所有権がない」現状
2040 教育のミライ

2040 教育のミライ

礒津 政明

実務教育出版

ソニーグループシニアアドバイザー・平井一夫氏(ソニー前社長・『ソニー再生』著者)、渋谷教育学園学園長・田村哲夫氏推薦! 豪華対談も巻末に同時収録! メタバース、Web3、VR、AR、MR、プログラミング的思考、探究学習、…

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