近く到来するマニュアル化された社会。「マニュアル人間」では「マニュアル化」できないという矛盾

近く到来するマニュアル化された社会。「マニュアル人間」では「マニュアル化」できないという矛盾
(※写真はイメージです/PIXTA)

「協調性」や「学力」を重視し、紋切り型の人材育成を目的とした戦後教育をいまだ色濃く引き継ぐ、現代日本の教育現場。社会に出てから必要な「独創性」や「問題解決能力」、「知識の運用」などの礎となる「主体性」の育成に重きを置かれない教育は、毎年新社会人が送り出されている社会全体にどのように影響を与えているでしょうか。世界中で多様な教育現場を視察し、独自に編み出した教育ビジネス構想を実現させるため、2015年にソニーグループ初の教育事業会社・株式会社ソニー・グローバルエデュケーション(SGE)を設立。現在同企業の取締役会長を務める礒津政明氏による著書『2040 教育のミライ』から、現代日本における教育の問題点とその改善策について解説します。

「プログラミング教育」は「言語教育」そのもの

プログラミング教育は言語教育そのものであり、数学や国語、英語の教育と何ら変わりません。

 

人がなぜ数学を学ぶのかといえば、数学は人の思考を究極的に抽象化した「言語」であり、その言語(数字)を用いることで頭の中を論理的に記述できるからです。人が国語や英語を学ぶのは、人の思考の幅を広げ、多様な表現力を持つためです。

 

その点、プログラミング言語は自然言語が持つ多様さや表現力と、数字が持つシンプルさや論理性のちょうど中間にある言語です。

 

そしていま世の中の動きを見ると、いままで自然言語で扱われていたことがどんどん抽象化されていく現象が起きています。

 

たとえば、レストランでシェフが経験則でやっていた作業を自動化するにあたり、調味料の量や炒める秒数や温度管理などをすべて数値化し、フローチャートに書き換える作業は、まさしく抽象化です。

 

もしくは、コールセンター業務をチャットボットに置き換えるにあたり、優秀なスタッフの受け答えをモデル化する作業も抽象化です。その抽象化作業のことを「プログラミング」と呼びます。

 

面倒でも一度抽象化してコンピュータやロボットでも再現できるようにすれば、それまで人一人でしか与えられなかった影響力が何千倍、何万倍も大きくなる。だからこそ、いまの時代は言語教育としてのプログラミングの重要性が増しているのです。

 

そして言語教育であるからこそ、言語習得自体が目的化しては意味がありません。

 

私たちが英語を学ぶのは、TOEICで満点を取るためでも、共通テストで良い点数を取るためでもなく、「外国人と円滑にコミュニケーションするため」です。

 

プログラミング教育も、その言語を使うことでどんなことができるのかを教えたり、「こんなものを作ってみたい」とモチベーションを高めてあげることこそが、言語習得以上に重要なことなのです。

 

なぜかというと、プログラミング言語は自然言語と比べ習得が桁違いに簡単だからです。いざ必要となったら学ぶことができますし、うろ覚えでもGoogle検索しながら書けばいいだけです。

 

また、プログラミング言語は時代とともに変化していくものなので、一つの言語を完璧にマスターしておく価値はそれほど高くありません。

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