AIが膨大なデータから、子どもに選択科目をリコメンド
仮に必修科目の比重が減って選択科目が増えていくと、その組み合わせは膨大になり、簡単には選べなくなるはずです。「すべて子どもに任せればいい」という意見と「積極的に教員や親が関与すべき」という意見で対立が起きそうです。
そこで威力を発揮するのが、AIによる分析です。
たとえば、子どもが宇宙開発に興味があるのなら、いままで受けてきた科目とその結果を加味した上で、新たに学ぶ科目をレコメンドしてくれる。倫理的な問題はありますが、もしかしたら個人のゲノム情報をレコメンドに反映する時代もくるかもしれません。
先ほど、現時点のAI型教材の限界についてお話ししました。カバーする領域が非常に狭く、基本的に特定の科目の、特定の問題の解き方しか分析対象にしていないという話です。
しかし、AIのポテンシャルを考えれば、教科ごとに閉ざされたAI活用で終わるのはもったいない話です。無限にある教科の中から自分に本当にフィットする教科を見つけるためのAI活用もあってしかるべきです。
たとえばそれこそ、理科が苦手な一方、美術の能力に秀でた子に対して「あなたは美術家に向いているので、そこまで理科に時間を割かなくてもいいかもしれません」というAIがあってもいいと思うのです。
科目選びの延長として、進学先や就職先のレコメンドAIも出てくるはずです。
「AIに人生を決められてたまるか」という人もいるでしょうが、民間で働いた経験のない教員の主観でアドバイスされるくらいなら、データに基づくAIの方がまだ信頼できるというものです。
もちろん、どれを最終的に選ぶかは本人や親が考えることです。AIの弾き出す結論は統計ですから、例外は当然あります。しかし、「膨大なデータの中からあたりをつける」ことに関してはかなり実用的になっているので、積極的に活用していくべき段階だと思います。
そこで立ちはだかる壁が、「AIの学習データをどう確保するか」です。
宇宙開発を夢見る子どもにAIが科目をレコメンドするには、すでに宇宙開発に携わっている大人が過去に学んできたことの追跡データが必要です。これは、AI型教材がテスト結果のデータを集めることとはまったく違う次元の話です。
そのようなデータを、どう集めるか。その解決策として私が文科省や総務省を始め、これまでも教育関係者に提案してきているのが「教育ブロックチェーン」の導入です。