自分や親、教員が気づけない才能をAIが発見
それは、たとえば「あなたはサッカーに打ち込んでいますね。あなたの得意な戦術眼を活かせば、将来経営コンサルタントで成功する確率は〇〇%です」といった一見予言めいたものですが、生徒自身や親でさえ気づかない才能を発掘してくれるサービスともいえます。
才能に合わせたキャリア選びもそうですが、生徒に意欲があっても実際は向いていない、というミスマッチを避けることができるのは、AIによるキャリア分析・提案サービスの真骨頂です。
もちろん、学校や行政を中心に課題は山積みです。学習履歴などの個人情報を扱うガイドラインは未だ存在しませんし、データを学校外で分析する場合には、生徒の名前と成績を切り離して匿名化することが暗黙のルールとなっています。
二次利用についても現時点では明確なルールがないため、企業がどのデータを使えるか、どこまで分析できるか、などがあいまいなままです。
氏名など、個人が特定できる情報を国ができるかぎり隠したくなる気持ちはわかりますが、そうは言ってもデータの種類は多ければ多いほど良いものです。
たとえば、「四国在住の、野球が好きで、小3の分数でつまずいたが中1の方程式では数学が得意になっていた、ヤマダタロウさん」は、実は「九州の大学で理学部生となり、生物研究者として成功した人が多い」という統計的に有意なエビデンスが得られる確率が高まる、ということです。
「何だかインチキくさいな」と思われるかもしれませんが、人間が気づかない法則性や意味をビッグデータの海から見出すのがAIです。絶対に関連性がないと思われるデータでも、まずは集めて分析することで、新たな発見があるかもしれません。
特に、やりたいことが見つからず、いつまでも自分探しをしているような受け身の人には、どの分野が向いていそうか、興味がありそうかなど、粗い解像度でもAIが提案してくれるのはありがたいはずです。
人間の想像を超えてくるのがデータ利活用の結果ですから、まずはデータを自由に蓄積し、幅広い用途で使えるガイドラインをデジタル庁と文科省が早急に整備すべきです。
その上で、学力向上や教員負担軽減の点でもメリットが多いことを、国民に対してもしっかり啓蒙してほしいと思います。
礒津 政明
株式会社ソニー・グローバルエデュケーション 取締役会長