(※写真はイメージです/PIXTA)

「協調性」や「学力」を重視し、紋切り型の人材育成を目的とした戦後教育をいまだ色濃く引き継ぐ、現代日本の教育現場。社会に出てから必要な「独創性」や「問題解決能力」、「知識の運用」などの礎となる「主体性」の育成に重きを置かれない教育は、毎年新社会人が送り出されている社会全体にどのように影響を与えているでしょうか。世界中で多様な教育現場を視察し、独自に編み出した教育ビジネス構想を実現させるため、2015年にソニーグループ初の教育事業会社・株式会社ソニー・グローバルエデュケーション(SGE)を設立。現在同企業の取締役会長を務める礒津政明氏による著書『2040 教育のミライ』から、現代日本における教育の問題点とその改善策について解説します。

自分や親、教員が気づけない才能をAIが発見

それは、たとえば「あなたはサッカーに打ち込んでいますね。あなたの得意な戦術眼を活かせば、将来経営コンサルタントで成功する確率は〇〇%です」といった一見予言めいたものですが、生徒自身や親でさえ気づかない才能を発掘してくれるサービスともいえます。

 

才能に合わせたキャリア選びもそうですが、生徒に意欲があっても実際は向いていない、というミスマッチを避けることができるのは、AIによるキャリア分析・提案サービスの真骨頂です。

 

もちろん、学校や行政を中心に課題は山積みです。学習履歴などの個人情報を扱うガイドラインは未だ存在しませんし、データを学校外で分析する場合には、生徒の名前と成績を切り離して匿名化することが暗黙のルールとなっています。

 

二次利用についても現時点では明確なルールがないため、企業がどのデータを使えるか、どこまで分析できるか、などがあいまいなままです。

 

氏名など、個人が特定できる情報を国ができるかぎり隠したくなる気持ちはわかりますが、そうは言ってもデータの種類は多ければ多いほど良いものです。

 

たとえば、「四国在住の、野球が好きで、小3の分数でつまずいたが中1の方程式では数学が得意になっていた、ヤマダタロウさん」は、実は「九州の大学で理学部生となり、生物研究者として成功した人が多い」という統計的に有意なエビデンスが得られる確率が高まる、ということです。

 

「何だかインチキくさいな」と思われるかもしれませんが、人間が気づかない法則性や意味をビッグデータの海から見出すのがAIです。絶対に関連性がないと思われるデータでも、まずは集めて分析することで、新たな発見があるかもしれません。

 

特に、やりたいことが見つからず、いつまでも自分探しをしているような受け身の人には、どの分野が向いていそうか、興味がありそうかなど、粗い解像度でもAIが提案してくれるのはありがたいはずです。

 

人間の想像を超えてくるのがデータ利活用の結果ですから、まずはデータを自由に蓄積し、幅広い用途で使えるガイドラインをデジタル庁と文科省が早急に整備すべきです。

 

その上で、学力向上や教員負担軽減の点でもメリットが多いことを、国民に対してもしっかり啓蒙してほしいと思います。

 

 

礒津 政明

株式会社ソニー・グローバルエデュケーション 取締役会長

 

2040 教育のミライ

2040 教育のミライ

礒津 政明

実務教育出版

ソニーグループシニアアドバイザー・平井一夫氏(ソニー前社長・『ソニー再生』著者)、渋谷教育学園学園長・田村哲夫氏推薦! 豪華対談も巻末に同時収録! メタバース、Web3、VR、AR、MR、プログラミング的思考、探究学習、…

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